サステナビリティ・アドバイザリー・ボード

当金庫では、サステナブル経営の高度化を目指し、外部有識者の方々の意見を聴取し、意見交換する場としてサステナビリティ・アドバイザリー・ボードを設置しました。
2022年4月に第1回を開催し、4名のボードメンバーと理事長はじめ役職員で意見交換を行いました。

出席者

ボードメンバー
  • 足達 英一郎氏
    株式会社日本総合研究所 常務理事
  • 佐藤 隆文氏
    農林中央金庫 経営管理委員(前 IFRS財団 副議長)
  • 高村 ゆかり氏
    東京大学未来ビジョン研究センター 教授
  • 溝内 良輔氏
    キリンホールディングス株式会社 常務執行役員
農林中央金庫の参加者
  • 奥 和登
    代表理事理事長
  • 八木 正展
    代表理事兼常務執行役員 最高執行責任者
  • 今井 成人
    常務執行役員(CO-CSuO)
  • 北林 太郎
    常務執行役員(CO-CSuO)
  • 内海 智江
    常務執行役員(CDO)
  • 尾崎 太郎
    営業企画部長(食農法人営業本部SuO)
  • 胡桃沢 克成
    統合リスク管理部部長(リスク管理ユニットSuO)
  • 塩田 岳人
    市場運用部副部長(グローバル・インベストメンツ本部SuO)
  • 宮路 出
    JAバンク統括部副部長(リテール事業本部SuO)
  • 野田 治男
    総合企画部サステナブル経営室長

ボードメンバー

足達英一郎氏

気候変動をはじめとした持続可能性・サステナビリティの課題を考えるとき、企業、中でも金融を担う経済主体の役割は非常に重要であるという認識は、広く共有されていると思います。農林中金は、大きな資産を持つアセットオーナーであり、また農林水産業・食料・地域などの課題解決に重要な役割を果たす存在です。大きな期待を寄せています。

足達英一郎氏

佐藤隆文氏

農林中金は、農林水産業全般にわたるリーディングバンクであると同時に、グローバルな資本市場において大きなアセットオーナーとしての機能も有しています。さらに、協同組織の金融機関という非常にユニークな存在です。サステナビリティについて考える際に、農林中金ならではの特徴と強みを生かした取組みができるのではと期待しています。

佐藤隆文氏

高村ゆかり氏

サステナブル・ファイナンスの重要性は高まっており、欧州の農業協同組合金融機関ではサステナビリティの分野でユニークかつ野心的な取組みを進めています。日本の金融機関でも、いつかこうした金融機関が出現すればと期待し心待ちにしていました。農林中金がサステナブル経営を意欲的に進めることを心強く思い、期待しています。

高村ゆかり氏

溝内良輔氏

「いのちの連鎖」という言葉にキリングループとの共通点を感じました。キリングループは「生への畏敬」という醸造哲学を持ち、祖業であるビール製造は農家の方々がつくる原料を酵母という生きもので加工する、いのちで成り立っている産業です。だからこそ、いのちについて謙虚に学ぼうという精神を大切にしています。共通点をもつ企業として、サステナビリティの実現に向けて共に取り組ませていただきたいと思います。

溝内良輔氏

農林中金のサステナビリティ経営に関するご意見

中長期目標について

  • 中長期目標として「投融資先等のGHG排出量削減」・「農林水産業者所得の増加」の両方を掲げることは、まさにこれだと感じました。農林中金の出資先・融資先の多くは農林水産業に関連する方々であり、農林水産業のサステナビリティを実現することで農林中金自身もサステナブルになります。農林水産業の魅力を増やすために所得増は大変重要です。あわせて、地球に暮らす一員としてGHG削減を目指していくことも重要です。両方を目指すことはチャレンジングですが、適切な目標だと考えます。
  • 一部目標では、具体的な数値が現時点で示されていませんが、数値化に向けて取組む必要があります。例えば、出資・融資によって削減されるGHG排出量や、波及効果も含めて創造される経済的価値(インパクト)を目標として設定することも今後検討できるのではないでしょうか。

ステークホルダーについて

  • 農林水産業者にとって所得の向上は目指す指標となります。一方、アイデンティティややりがいなどにも光を当て、農林水産業者のウェルビーイングを向上させる市場形成や指標化の検討も期待します。
  • 日本企業は、精緻で正しい数値を追い求める傾向があります。一方、海外では、原単位や計算を自分たちでルール化すると発想します。こういった柔軟な考え方も必要と考えます。
  • ステークホルダーには若い世代が含まれており、これからの時代は彼らが主役になっていきます。若い人たちの生きる力を育むという意味でも、農林水産業の体験、あるいは教育機会提供の拡大も検討できるのではないでしょうか。
  • 農林中金は、協同組織金融機関という特性上、強い自己規律が求められます。そのため、良質のディスクロージャーでステークホルダーとのコミュニケーションを図ることが重要です。
  • 投融資による短期的な収益とサステナビリティ課題の折り合いの難しさはあります。一方、気候変動や生態系への影響は農林水産業者に直接影響を及ぼします。農林中金は、困難を超えて課題に取り組む論拠を持っている金融機関だと思います。「いのちの連鎖」の重要性を、職員はじめステークホルダーとも共有してもらいたいと思います。

自然資本について

  • 対外開示内容を見る限り、自然資本や生態系サービスについて包括的な概念が据えられていないように感じます。農林水産業を基盤とする農林中金においては重要と考えます。自然とは我々に恵みをもたらしてくれる資本であり、その資本を減耗・毀損してはならないという大きなパースペクティブが必要ではないでしょうか。

社会課題について

  • 地方では、人材不足や情報のギャップ、それらの課題があるために案件形成ができず資金が回らないという構造があります。農林中金だからこそできる、地域の農林水産業者の裨益となる質の良い取組みを期待します。
  • 食べる・飲むという人生の楽しみに直結する取組みも重要と思います。例えば、フードロスでは、川上から川下まで国全体の需給のミスマッチを解消できれば、社会課題の解決に資することになります。課題を包括的に捉え、一気通貫で取り組めれば、大きなストーリーとなりアピール力も高まります。

奥和登 代表理事理事長による総括

奥和登

本日はみなさまから貴重な意見をいただき、誠にありがとうございました。私たちは約100兆円の資産を有する金融機関として、サステナビリティの実現に向けて世の中に責務を有していると考えています。また、私たちは農林水産業を基盤とする組織です。農林水産業は地球環境あってこそ成り立ちます。地球環境の持続可能性の追求に向けて、取り組む必要があると考えています。
本日の議論の内容を踏まえて、4点に整理しました。

  • 当金庫では中長期目標を掲げ取組みを進めています。本日のご意見も踏まえ、ステップバイステップで行うことで、点が線に、線が面にという変革点がいずれ到来すると考えています。
  • 生物多様性を確保するためには、自然を適切に手入れすることが必要と考えています。地域を荒廃させることなく活性化するには、農林水産業者の方々の所得の向上が必要となります。このため、当金庫がオーガナイズ機能を果たし、取り組んでいきたいと考えています。
  • ウェルビーイングを含め、現行スケーリングが可能な経済価値を超えた、幸せの価値のような考え方をどのように付加していくかは、非常に挑戦しがいのあるテーマです。当金庫は食と農の未来に対して確信と使命と夢を持つ組織だと捉え、次世代につないでいくことを考えなければならないという思いを強くしました。
  • サステナビリティの規制やスタンダードを踏まえた準備と対応が必要です。一方、当金庫がどのような思いで取り組んでいるのかというナラティブを、世の中に語っていくことも進めたいと思います。

本日のご意見も十分に踏まえたうえで、パーパスの実現に向けて大きなストーリーとミクロの積み上げの両様をしっかりと捉え、サステナブル経営を推進してまいります。

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