トップメッセージ

ごあいさつ

 みなさまには、平素より当金庫の業務に関し、多大なるご支援等を賜り、厚く御礼申しあげます。

 また、このたびの令和6年能登半島地震により被害を受けられた皆さまに対して、心よりお見舞い申しあげます。

 2023年度は、「中期経営計画(2019 ~ 23年度)」で掲げた「農林水産業と食と地域のくらしを支えるリーディングバンク」を目指す姿とすることを不変としつつ、業務運営を着実に進めております。

 2023年度半期の金融市場は、各国中央銀行の利上げによる金融引締めの影響から物価の上昇ペースは鈍化したものの、粘り強い雇用・消費者需要を背景にインフレーション率の高止まり懸念が継続し、米欧を中心に金利は上昇しました。株式市場は底堅く推移し、為替市場は日米金融政策の違いからドル高・円安が大きく進展しました。

 このような変動が激しく不透明な市場環境が継続するなか、健全性に重点を置いた財務運営を行った結果、2023年度半期決算については、連結経常利益は1,855億円、連結自己資本比率については普通出資等Tier 1比率14.02%、Tier 1比率18.12%、総自己資本比率18.13%となりました。引き続き、変化の激しい経済・金融環境の継続が想定されますが、適切な財務運営を行ってまいります。

 今後の業務運営といたしましては、当金庫の存在意義(パーパス)のもとで、引き続き農林水産業の発展に尽力するという使命を果たし続けるべく、5つの取組事項「地球環境への貢献」「農林水産業・地域への貢献」「会員の経営基盤強化」「持続可能な財務・収益基盤の確保」「組織の活力最大化」を着実に実践してまいります。また、これらの取組事項の実践にあたっては、JAバンク中期戦略、JFマリンバンク中期戦略、森林系統運動方針などと一体になって、系統グループと連携して取り組むとともに、JAグループの一員として、不断の自己改革にも着実に取り組んでまいります。

 JAバンク、JFマリンバンク、JForestグループおよび当金庫といたしましては、今後とも、協同組合ならではの役割・機能を発揮しつつ、みなさまから安心・信頼される金融機関・組織を目指していくとともに、農林水産業・農山漁村の振興や、環境・社会課題解決に貢献する取組みを進めてまいります。

 国際情勢の変化を背景としたグローバルな物価上昇は農林水産業をはじめとして多くの産業に多大な影響を与えております。当金庫は農林水産業・地域を基盤とする金融機関の使命として、影響を受けている農林水産業に関連するステークホルダーのみなさまに対して最大限のサポートを継続してまいります。

 最後になりますが、JAバンク、JFマリンバンク、JForestグループおよび当金庫を、これまで以上にお引き立て賜りますよう、お願い申しあげます。

2024年1月

農林中央金庫
経営管理委員会会長
山野 徹

農林中央金庫
代表理事理事長
奥 和登

理事長メッセージ

 2022年は、新型コロナウイルス感染症の影響緩和による需給のひっ迫に加えて、国際情勢の変化による影響で世界的に物価上昇が加速しました。農林水産業では、元々の担い手不足や農地の減少等により構造的に生産力が弱っていたところに、新型コロナウイルスによる需要の弱まり、さらに今回の肥料・飼料・燃料といういわゆる「3料高」として生産資材価格高騰の影響が加わりました。生産者は農畜産物への販売価格転嫁は難しく、日本の農林水産業に多大なる影響を与えています。当金庫としては、農林水産業を礎とする金融機関として、金融・非金融の両面からしっかりと役割を果たしていきます。

 さて、当金庫は「持てるすべてを『いのち』に向けて。ステークホルダーのみなさまとともに、農林水産業をはぐくみ、豊かな食とくらしの未来をつくり、持続可能な地球環境に貢献していきます。」というパーパスを2019年から掲げています。これは、私たちの志を凝縮した言葉であり、私たちが目指すものであり、社会に対する約束事であります。

 このパーパスを実現するために、当金庫は2つの中長期目標を掲げています。一つは「投融資先等の温室効果ガス排出量削減、2050年ネットゼロ」、もう一つは「農林水産業者所得の増加」です。いずれも当金庫のパーパス実現に向けて不可欠な取組みであると考えています。

農林中央金庫の目指す姿

農林中央金庫の目指す姿

中長期目標

中長期目標

 この中長期目標を達成するために五つの取組事項を置きました。「地球環境への貢献」「農林水産業・地域への貢献」「会員の経営基盤強化」「持続可能な財務・収益基盤の確保」「組織の活力最大化」です。

 この取組事項のイメージは、一番上に農林水産業が成立するうえで欠かせない「地球環境」があり、二つ目の層には「農林水産業と、そこに暮らしている人と地域」が存在し、三つ目の層には「農漁協や森林組合などの当金庫の会員」の存在があります。四つ目には「会員」を支えられる組織であるように当金庫の財務・収益基盤を強固なものにしていくこと。そして、そのような組織となるために当金庫の人材力を作るということが五つ目です。この五つについて、さまざまなチャレンジをして、取組んでいくということに尽きると思っています。2022年度に実施した取組みのうち何点か特徴的なものをご紹介します。

気候変動対応の強化

 当金庫では、気候変動への対応を進めるにあたり「2050年ネットゼロ」にコミットし、あわせて、銀行間の国際的なイニシアティブ「Net-Zero Banking Alliance(NZBA)」に加盟しました。まずは、投資および融資ポートフォリオに具体的な目標を設定し、投融資先とのエンゲージメントを通じて、トランジションを促進してまいります。

 そして、当金庫拠点のGHG排出量削減については2030年度までのネットゼロを掲げています。省エネへの推進や再生可能エネルギーへの転換等を進め、排出量の削減を進めてまいります。

 また、自然界で多くの温室効果ガスを吸収する役目を果たすのは森林と海です。

 当金庫としては会員である森林組合系統と一体で森林由来のCO2吸収量を確保するため、2030年度でCO2吸収量を年間900万トンとする目標値を掲げました。森林は、CO2吸収や生物多様性を保全するうえで重要な役割を担っている一方、立木価格の低迷や再造林を行うためのコスト、林業の担い手の減少といったさまざまな課題を抱えています。当金庫では、このような森林・林業に関わる川上から川下の課題解決に向けた取組み、例えば、農中森力基金や林業労働安全性向上対策事業等を通じて、森林施業面積目標、森林吸収目標の達成を目指してまいります。

 また、海の分野では、2022年5月に鳥取県、鳥取県漁業協同組合とともに「ブルーカーボンプロジェクト」を立ち上げました。温暖化等によって増殖したムラサキウニによる食害から藻場を守る取組みです。ムラサキウニを採取、畜養する体制を構築することで収入を確保しながら、温室効果ガスの削減に寄与する藻場の回復を目指しています。

農林水産業者所得の増加

 農林水産業の課題を考えた際に、その根幹は「所得」であると考え、中長期目標の一つに「農林水産業者所得の増加」を設定しました。

 一金融機関でできることには限界がありますが、当金庫でアプローチできることとして、まず農業分野において、取引先である農業者の利益や成長に向けた人材投資、設備投資などを「付加価値額」として定義し、農業者の所得増加額を測る指標として計測を開始しました。

 JAバンクにおける担い手の経営課題に対するコンサルティング活動は、2022年度で300件超の実績となりました。課題解決に向けたソリューションの提案で終わることなく、継続して実施状況を確認するとともに、実現に向けたサポートまで一貫して対応していることが特徴です。

 生産資材価格の高騰により、農林水産業を取り巻く環境が非常に厳しい今、引き続き担い手の所得増加に寄与できるよう取り組んでまいります。

2022年を「ダイバーシティ元年」と位置付け

 当金庫は2022年を「ダイバーシティ元年」と位置付け、なぜダイバーシティ推進が必要なのか、役職員に理解してもらうための研修や講演を積極的に開催しました。

 新しい風を取り込みながら、個人の能力を最大限に引き出すことで、それらの組み合わせによって、事業の進化やイノベーションが生まれます。要素が多ければ多いほど組み合わせの数は増え、化学反応が起きる可能性も大きくなります。そのためのダイバーシティであると思っています。

 また、2040年度までに女性管理者比率を30%にする目標を掲げています。2023年3月末時点では7.6%ですが、女性職員の活躍や成長を後押しするための取組みも実施しています。

 当金庫が発展し、社会に支持されるような組織となるために、性別・年齢・国籍・障がいの有無等に囚われることなく、多様性の力を発揮し、一人ひとりが自主的・自律的・自発的に働き方を工夫し、育児や介護といったキャリア形成上のさまざまな制約を乗り越えながら、活躍・成長を続けていくことができるよう、引き続き取組みを進めてまいります。

創立100周年、次の時代に向けて種まきを、しっかり。

 農林中央金庫は、2023年12月に創立100周年の節目を迎えます。関東大震災が起きた1923年12月、震災の混乱が冷めやらぬなか、「産業組合中央金庫」として産声をあげ、以来、100年の歴史を刻み、今日を迎えています。この間、時代の変遷とともに自己改革を遂げながら、幾多の試練や課題を乗り越えてきました。

 重要なことは、単にこれまでを振り返るのではなく、これからの行く末を考えるきっかけにすることです。すなわち、「なぜ農林中金が100年間みなさまに支えられながらやってくることができたのか」、そのうえで、「この先どのように社会・地域・会員の役に立つ存在になっていくのか」、役職員で考え、次の時代に向けて種まきをしっかりやっていくことだと思っています。

 一例を申し上げますと、2022年度には『Myパーパスプロジェクト』を始めました。役職員が「何のために・誰のために」働くのか、その意義を再認識するきっかけ提供を目的とする事業です。その1つに、役職員が手上げ方式で農家に出向いて農作業を手伝う取組み「JA援農支援隊」というものがあります。人手不足の農業現場に対し、労働力としてお手伝いをさせていただく(株)農協観光主催の事業なのですが、農林中金の職員が積極的に参加することで、組織の原点である農林水産業に直接触れ、体感することができる。そのことが、パーパスと自分の仕事とのつながりを理解するきっかけ提供になると考えています。実際に参加した職員からは「直に土に触れながら、農林中央金庫のパーパス、農業や地域の未来を考える貴重な時間であった」といった声が数多く聞かれています。

 今後も、このような取組みを継続、注力することで、役職員には当金庫のパーパスに高いレベルで共感してもらい、次の100年に向けた組織づくり、人づくりの礎になっていってもらいたいと思います。

 引き続き、当金庫の存在意義(パーパス)・中長期目標を意識し、より将来の持続可能性の強化につながる取組みを進めるとともに、経営計画の完遂に向けて歩みを進めてまいります。

2023年7月

pagetop