気候変動(TCFD提言に基づく開示) ー指標・目標ー

指標と目標

区分 指標 直近実績 目標
投融資先等のGHG排出量削減 投融資ポートフォリオのGHG排出量 2050年ネットゼロに向けた2030年度中間目標
【融資】電力セクター

基準年:2019年度実績
213gCO₂e/kWh
2020年度
217gCO₂e/kWh
138~165gCO₂e/kWh
【投資】 投資一単位あたりの排出量(株式・社債)

基準年:2019年度実績
0.66tCO₂e/百万円
2020年度
0.55tCO₂e/百万円
2019年度比▲17%
2019年度比▲49%
会員と一体となった森林由来CO₂吸収 2021年度
612万tCO₂
2030年度時点で900万tCO₂/年
農林中央金庫拠点のGHG排出量 2021年度
19,849tCO₂
2030年度までにネットゼロ
サステナブルビジネスの推進 サステナブル・ファイナンス新規実行額 2021年度~2022年度(累計)
4.4兆円
2030年度までに10兆円
リスク管理態勢の強化 石炭火力発電向け投融資残高の削減 2022年度末
366億円
2040年までにゼロ

※2019年度対比での上昇は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴うエクスポージャー拡大に加えて、システム登録整備により電力セクターに分類した取引先数の増加によるもの。

投融資先のGHG排出量削減 中間目標の考え方

基本的な考え方

  • 当金庫はNet Zero Banking Alliance(NZBA)への署名を通じて投融資先のGHG排出量2050年ネットゼロにコミットしています。
  • NZBAの枠組に則り、融資ポートフォリオのうち電力セクターについて2030年度中間目標を設定しています。今後も同枠組に規定される高排出9セクター(電力のほか、石油・ガス、鉄鋼、石炭、運輸、不動産、農業、セメント、アルミニウムが該当)の目標を順次設定していきます。
  • またこれに加え、当金庫の投融資ポートフォリオのうち投資資産が占める割合の重要性に鑑み、機関投資家向けのネットゼロイニシアティブの枠組等を参考のうえ、投資ポートフォリオ(今回は株式・社債を対象)にかかる2030年度中間目標も併せて設定しています。今後も当金庫におけるGHG計測実務の進展等を踏まえ、目標の対象とする投資資産クラスの拡充を図っていきます。

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投融資先のGHG排出量の算定

投融資を通じた間接的なGHG排出量(Financed Emissions、Scope3 Category15)は金融機関のGHG排出総量の大きな割合を占めるため、これらの計測・削減は重要な課題であると認識しています。

当金庫は2022年度に投融資ポートフォリオの広範なアセットクラスを対象としてGHG排出量の現状把握に取り組み、事業法人向けの貸出金・社債・株式(ファンドを通じて投融資を行っている案件を含む)、プロジェクトファイナンス(発電事業向け)を対象としたGHG排出量の計測を実施しました。

算定手法

GHG排出量の計測にあたっては、PCAFが提唱する計測手法を参照しました。当金庫は2022年3月にPCAFに加盟し、PCAFの保有する知見やデータベースを活用した推計等、投融資ポートフォリオのGHG排出量の計測・開示にかかる取組みの高度化に取り組んできました。

対象アセット 事業法人向けの貸出金・社債・株式(ファンド投融資案件※1を含む)、プロジェクトファイナンス(発電事業向け)を対象
  • ※1 今年度からプライベート・エクイティ(以下、PE)ファンドにおける(バーゼル規制関連比率のリスク・アセット算定時の)非ルックスルー資産も計測対象としています。
算定式
  • ※2 Scope1・2を対象としています。
対象年 2020年度
農林中央金庫の投融資金額:2021年3月時点の残高
財務データ・排出量データ:2021年3月末までの期間で取得可能な過去3か年の最新データ
排出量データの出所
  • 貸出金・社債・株式
    投融資先企業の開示・推計データは、外部情報ベンダーのTrucostを活用
    上記が得られない場合、PCAFデータベースの原単位(地域・セクター別)データを用いて推計
  • プロジェクトファイナンス(発電事業向け)
    「PJの年間想定発電量※3 ×EIB(欧州投資銀行)が公表する排出係数※4」を用いて推計
  • ※3 発電容量 ×24h ×365d ×Capacity Factor(IEA公表値)にて算出しています。
  • ※4 再生可能エネルギー案件は排出係数をゼロとしています。

結果

左記に示したアセットを対象としたGHG排出量を計測した結果 22.1百万tCO₂eとなり、TCFD提言における開示推奨セクターに基づく内訳は以下の通りとなりました。

セクター GHG排出量
(百万t CO₂e)
経済的原単位
(t CO₂e/億円)
計測可能エクスポージャー(兆円) 計測不可能エクスポージャー
(兆円)
TCFD推奨
セクター
エネルギー
(電力含)
7.5 467 1.6 0.05
運輸 2.1 100 2.1 0.03
素材・建物 8.0 173 4.6 0.11
農業・食料・林産物 2.1 112 1.8 0.02
その他 その他 2.4 21 11.3 1.46
合計 22.1 103 21.5 1.66
  • ※ 本表は現時点での計測結果であるため、今後の計測精緻化に伴い数値が変わり得る可能性があります。また、本表の計測結果について第三者認証は取得していません。

計測結果にかかる補足事項

  • 上記計測は、当金庫のオンバランス資産のうち、事業法人向けアセットを対象としており、ファンド投融資案件については、バーゼル規制関連比率のリスク・アセット算定時に個社が特定できるルックスルー案件だけでなく、PEファンドにおける非ルックスルー資産もデータ補正を外側で行うことで計測対象としています。
  • なお、今年度からPCAFスタンダードに基づき新たに計測を開始した、プロジェクトファイナンス(発電事業向け)は約0.7兆円、PEファンド(非ルックスルー資産)は約0.1兆円を上記計測可能エクスポージャーに含んでいます。
  • グループファイナンス・キャプティブファイナンス向けの投融資については、可能な限り実態に即した排出量計測を行う観点から、親会社向けエクスポージャーと見做して計測しています。
  • 上記計測不可能エクスポージャーは主に財務データの不足によるものです。

データクオリティスコア(Data quality score)の算出

  • PCAFでは推定排出量の品質を評価するためのデータクオリティスコア(Data quality score)を下表のとおり定めており、当該スコアの算出を推奨しています。
  • 投融資先の各企業における排出量データの開示状況は区々であり、開示がなされていない投融資先の排出量については、外部情報ベンダー(Trucost)の推計データを利用し、補足情報として投融資先の売上および排出原単位を利用することで「経済活動に基づく排出量」を推定しました。
  • 算出ロジックの高度化に際し、従来のTrucostデータに加え、CDPのデータベースを新たに活用し、 個別企業のCDPへのアンケート回答から、外部認証の有無の判別を実施したことから、“スコア1”を付与することを実現しました。なお、今般の計測にかかるデータクオリティスコアの算出結果は約2.48となっており、今後も継続的なスコア改善を図ります。

炭素関連資産の状況

2021年10月のTCFD提言の改定に基づく炭素関連資産の定義変更を受け、開示セクターを拡大しています。2023年3月末の炭素関連資産エクスポージャー(貸出金)は7.4兆円、全セクター向けエクスポージャー(貸出金)に対する割合は43.9%となっています。
当金庫は、NZBAの枠組みに則し、2030年までのGHG排出量の中間削減目標策定について、電力セクターについて策定済みであり、今後他の炭素集約型セクターの目標策定も順次進めてまいります。投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量の2050年ネットゼロに向け対応を進めるとともに、当該エクスポージャーのモニタリングを適切に実施します。

2023年3月末 炭素関連資産エクスポージャー

セクター Exp(兆円) 集中割合
電力 0.8 4.6%
石油・ガス 0.4 2.5%
石炭 0.0 0.0%
エネルギー 小計 1.2 7.2%
航空貨物 0.0 0.2%
旅客航空 0.0 0.3%
海運 0.1 0.8%
鉄道 0.4 2.1%
トラックサービス 0.0 0.3%
自動車・コンポーネント 0.8 4.6%
運輸 小計 1.4 8.3%
金属・鉱業 0.3 1.8%
化学 0.6 3.7%
建材 0.1 0.5%
資本財 1.9 11.5%
不動産 1.0 6.1%
素材・建物 小計 4.0 23.6%
飲料 0.1 0.7%
農業 0.1 0.6%
包装食品・肉 0.4 2.2%
紙・林産品 0.2 1.4%
農業・食料・林産品 小計 0.8 4.8%
上記セクター 合計 7.4 43.9%
全セクター向け 総計 16.9 100%

※当金庫単体の貸出金を対象としています。

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