持続可能な海洋と水産業

ブルーエコノミーに着目した取組み

当金庫は、水産業を基盤の一つとする金融機関として、海洋や河川の保全と持続可能な利用を促進する「ブルーエコノミー」を推進しています。

ブルーカーボンの促進

海中の藻場等によるCO2吸収や固定を表す「ブルーカーボン」は2009年にUNEPの報告書に位置付けられ、気候変動対策にとって重要であるばかりではなく、藻場等が持つ水中生物の育成、保育の機能等、生物多様性の課題解決に向けたネイチャーベースドソリューション(NbS)として世界的にも注目されています。本邦では、特に沿岸部の藻場が、漁業者や地域住民の手によって長らく維持され、ブルーカーボンの効果をもたらしてきましたが、近年では漁業者の減少や地域の衰退で藻場保全の担い手も減少し、加えて、気候変動の激化がもたらす海中環境の変化と魚類・ウニ等の食害の拡大により、豊かな藻場は急速に失われています。当金庫ではこうした現状に対して、会員であるJF系統や地域、企業と連携のうえ、藻場の造成・回復等を軸とするブルーカーボンのプロジェクトを構築、支援しています。さらに、その効果を定量化、経済価値化するカーボンクレジットの創出に向けた取組みも検討、展開しています。

トピック

鳥取ブルーカーボンプロジェクト

鳥取ブルーカーボンプロジェクトは、鳥取県、鳥取県漁業協同組合、日本財団「海と日本プロジェクト」、当金庫の連携プロジェクトで、ウニ駆除による藻場の回復、造成に加えて、駆除したウニを地場産のキャベツ等で畜養し、それを素材とした新商品の開発や学校教育との連携等を通じて、磯焼けの課題やブルーカーボンへの理解を鳥取県のみならず、全国で一層高めていくことを目的としています。
当金庫はプロジェクトの立ち上げ段階から参画しており、プロジェクトの円滑な運営に向けた事務局対応や情報発信等で貢献しています。

アジア開発銀行が発行するウォーター・ボンドへの投資

当金庫は、アジア開発銀行が発行するウォーター・ボンド(以下「本債券」)へ総額200百万豪ドルの投資を実施を実施しました。
本債券はアジア・太平洋地域における水の供給、衛生、水資源管理、水害対策をテーマとして、それらの諸問題解決に向けたプロジェクトに本債券の資金が利用されます。

海域の自然共生サイト登録の推進

昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)ターゲット3は、2030年までに陸域・海域等の少なくとも30%を保全・管理することを目指すもので「30by30目標」として注目されています。目標の達成に向けては、保護地域以外に効果的に保全されている地域を対象としていくことが重要で、そうした地域はOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)と呼ばれています。
本邦の保全地域の割合は目標と比較して依然としてギャップがありますが、2021年時点で陸域20.5%に対して、海域は13.3%の保全に留まっています。境界や所有者が陸域と比較すると明確ではないこと等が要因と考えられますが、一方で、漁業者やJFが中心となってブルーカーボンの創出といった生態系保全と漁業を両立する海域もあり、それらは海域の目標達成に向けてきわめて重要なサイトと認識しています。当金庫としては、海域におけるネイチャーポジティブに向けて、意欲ある会員等と連携して、自然共生サイトを推進しています。

トピック

山川町漁業協同組合によるJF初の自然共生サイト認定を支援

当金庫は、鹿児島県指宿市の山川町漁業協同組合が管理する海域の自然共生サイトへの登録申請をサポートしました。申請海域は、定置網漁と藻場造成活動を長年両立させながら、南限のアマモやウミガメの産卵場を含むサイトであり、漁協による申請としては初めて自然共生サイトとして認定されました。

スタートアップ等との連携

気候や自然の課題解決に向けてはイノベーションが不可欠であり、当金庫は、実証プロジェクトの構築やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を通じた資金拠出等を織り交ぜながら、イノベーションの担い手として重要なベンチャー、スタートアップ企業とも積極的に連携しています。ブルーエコノミーをテーマとする取組みを含め、気候・自然関連課題の解決に資するイノベーションの加速に貢献していきます。

トピック

カギケノリで畜産のメタン削減と漁業者の所得向上を企図する「Kaginowa」プロジェクトへの参加

地域の基幹産業である農業の脱炭素化と漁業の新たな収入源を模索するプロジェクト構築の一例が、株式会社アルヌール、山川町漁業協同組合、当金庫が連携したカギケノリの養殖技術確立と実装を目的としたプロジェクトです。カギケノリはメタンの主要な排出源である牛のゲップにおけるメタン排出を抑制する効果が期待され、これを養殖により安定的に供給することで、漁業者の新たなビジネスになると同時に、畜産由来のメタンを削減することを企図しています。本プロジェクトは、農業におけるメタン排出削減にとどまらず、ブルーカーボンを創出する藻場造成活動の主な担い手である漁業者への支援になることが期待されます。

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