農林水産業者所得の増加に向けて
当金庫は、農業者が抱える経営課題に対するコンサルティング活動、さらには食農関連企業等への出資・融資を通じたバリューチェーン構築支援等に取り組んでいます。
農業者の所得向上を統一的に捕捉していくための指標を「付加価値額向上」として定義し、当金庫の出資・融資先へのコンサルティング活動等を通じて、経営課題を解決することで所得向上に持続的に貢献していくことを目指します。
付加価値額向上のイメージ
担い手の所得向上に向けた取組み
当金庫は信連、JAと連携し、担い手へのコンサルティング活動を強化しています。2021~2025年度までの累計で1,483件実施し、担い手が抱える各種経営課題の解決に向けたソリューション提案を実施しました。また、担い手コンサルティングに際しては、ソリューションの提案にとどまらず、実施状況の確認、ソリューションの実現に向けた担い手へのサポートにも取り組んでいます。
農業経営の持続性向上に向けたソリューション提案とサポート
当金庫宇都宮支店取引先で、“循環型農業”を強みに肉牛肥育、WCS※用を含む水稲、アスパラガスの生産を複合的に営む株式会社イソシンファーム(以下、当社)に対して、当金庫と栃木県開拓農協が共同で担い手コンサルティングを実施しました。経営者に対するヒアリングや財務分析等を通じて、①創業者の営農技術の継承、②適切な事業規模の把握といった経営課題を認識しました。ソリューションとして、①事業承継を見据えた長期ビジョンを策定、②固有業務の棚卸や品目別収支分析に基づき、それぞれの品目の作付面積の最適化策等を提案しました。足元では、営農マニュアルの作成支援を行い、次世代への営農技術の継承に向けたフォローを継続しています。当社の一層の所得向上(=付加価値額向上)に向けて、引続き、当金庫と栃木県開拓農協の連携による金融・非金融の支援を継続していきます。
※ 稲発酵粗飼料。稲の穂と茎を同時に刈り取ってロール状に成型し、乳酸発酵させた牛の飼料のこと
食農関連企業等へのバリューチェーン構築支援
当金庫は、農林水産業者所得の増加に向けた施策として、食農関連企業等への出資・融資を通じた食農バリューチェーンの構築支援に取り組んでいます。
トピック
地域産品を活用した新たなバリューチェーン構築支援
株式会社ゆう幸(以下、ゆう幸)は、秋田発菓子ブランド『くら吉』を展開し、1次加工から3次加工まで手掛ける企業です。首都圏の百貨店などに販路を有しており、高価格帯の商品販売に強みを持ちますが、原材料が県内の少数農家からの原材料仕入が中心であり、商品ラインナップが限定的という課題がありました。
そこで、集荷から販売まで一貫したバリューチェーン構築を目指すJA 全農あきたとゆう幸との連携を当金庫がコーディネートしました。
当金庫からは、ゆう幸が行う秋田県産原材料を使用した新商品開発を融資により後押しし、これにより、JAかづの(秋田県鹿角市)産「北限の桃」を使用した新商品の『くら吉』各店舗での販売を実現しました。
今後とも、生産者・産業界・消費者を繋ぐ、新たな食農バリューチェーンの構築による、農業の生産基盤維持・生産者所得の向上に取り組んでまいります。
海外食農プライベートエクイティ(PE)ファンドへの出資を通じた本邦食農バリューチェーン構築支援
当金庫は、食品・農水産業のスマート化や脱炭素技術を持つベンチャー・中堅企業等へグローバルに投資する海外食農PEファンドへ出資しています。
投資先のポートフォリオには、以下のような農林水産業の先進的な技術をもつ企業があり、当金庫としてはこれらの技術革新や社会実装を支援するとともに、本邦食品・農水産業の現場への適用を進め、脱炭素化の着実な実現を図っています。
海外食農PEファンドが支援している主な技術
- 水資源の節約や土壌改良等の再生型農業
- 食農バリューチェーンの垂直統合
- 果樹の海外輸出
- 青果物の鮮度保持技術(食品ロス削減等)
- 農地でのGHG固定化
「F&A成長産業化出資枠」等を通じたサステナビリティ課題解決への貢献
当金庫グループは、農林水産業の高付加価値化・生産性向上のため、系統団体および国内外との協働およびそれを支えるリスクマネーの供給を目的に、「F&A(Food and Agri)成長産業化出資枠」を設定しています。この出資枠を通じた出資により、農林水産業を取り巻くサステナビリティ課題の解決に貢献しています。
環境制御ソリューションによる農業現場の課題解決の推進
当金庫グループのアグリビジネス投資育成では、プランツラボラトリー株式会社(以下、当社)への出資を通じて、農業施設の老朽化や酷暑対策といった業界の深刻な課題の解消に取り組んでいます。
当社は、「環境をつくり、農をつむぐ。」というビジョンを掲げ、独自の環境制御技術を強みとしたソリューションの提供を通じて、農産物の安定供給の実現を目指しています。遮熱と断熱の効果を併せ持つ建材「PUTPANEL(プットパネル)」、高い耐候性を持つ独自設計の建屋「PUTHOUSE(プットハウス)」などの資材を開発し、環境制御がしやすくエネルギー効率に優れた農業施設や小口分散の都市型植物工場「PUTFARM(プットファーム)」の普及に取り組んでいます。
また、倉庫や畜舎などの農業インフラは、多くの施設で老朽化が進んでおり、その設備更改が農業界における喫緊の課題となっています。さらには、近年の資材価格の高騰も相まって、農業インフラの整備に関する負担は一層大きくなっています。かかる中、当社のソリューションはその機能性のみならず、比較的短期間・低コストで導入できる点からも注目されており、サツマイモのキュアリング倉庫や菌床しいたけの栽培ハウスなど、農業生産・流通の様々なシーンにおいて採用されています。
当金庫グループは、JAグループ等のネットワークを活用した当社事業へのサポートを通じて、農業施設の老朽化や酷暑対策といった業界の深刻な課題の解決に貢献し、国内農林漁業および食品産業の持続的な発展に貢献してまいります。
農業データ活用の高度化による気候変動対策や担い手育成支援
環境・気象データやAIを活用した農業の栽培支援プラットフォーム「e-kakashi」の開発・販売を行うグリーン株式会社(以下、当社)に対して、当金庫グループのアグリビジネス投資育成より出資を行いました。
当社の「e-kakashi」は、センシング機器をほ場に設置することで温度等の各種環境データを収集し、そこに気象データや生育記録等のデータを組み合わせ、独自のアルゴリズムで分析することで、収量の増加や作物の品質向上に資する栽培ナビゲーションを生産者に提供します。従来は環境データを測定してもその分析は生産者に任せられているケースが多く、データを有効活用するためには生産者も一定の知識と経験が必要という課題がありましたが、当社の「e-kakashi」は科学的な知見に基づくデータの分析機能を有し、生産者が実際の農作業に活かせる形でナビゲーションを行うことができます。
これにより経験が不足する新規就農者を含め、生産者は足元の気候変動下においても施肥や防除のタイミング、収穫適期の適切な判断が可能になると期待されます。
当金庫グループは、JAグループ等が持つネットワークと当社の優れた栽培支援プラットフォームである「e-kakashi」を組み合わせることで、気候変動への対応や担い手育成といった農業が直面する課題解決に向けた取組みを推進してまいります。