農林水産業者所得の増加に向けて
当金庫は、担い手が抱える経営課題に対するコンサルティング活動、さらには食農関連企業等への出資・融資を通じたバリューチェーン構築支援等に取り組んでいます。
当金庫の出資・融資先へのコンサルティング等を通じて、いかに担い手の所得を引き上げていくか具体的な数値目標を設定し、取り組んでいるところです。
担い手の所得向上を統一的に捕捉していくための指標を「付加価値額向上」として定義し、中長期目標を設定のうえ、その達成に向けて取り組んでいきます。
これにより、当金庫が担い手の所得向上に向けて持続的に貢献していくことを目指します。
付加価値額向上のイメージ

担い手の所得向上に向けた取組み
当金庫は信連、JAと連携し、担い手へのコンサルティング活動を強化しています。2021年度は186先、 2022年度は301先、2023年度は306先で実施し、担い手が抱える各種経営課題の解決に向けたソリューション提案を実施しました。また、担い手へのコンサルティングに際しては、ソリューションの提案にとどまらず、実施状況の確認、ソリューションの実現に向けた担い手へのサポートにも取り組んでいます。
トピック
担い手へのソリューション提案・実現に向けたサポート
当金庫千葉支店取引先の農事組合法人百目木営農組合(以下、当組合)に対して、担い手コンサルティングを実施しました。経営者に対するヒアリングや財務分析等を通じて、①主力品目である主食米「ふさおとめ」「ふさこがね」の反収が地域平均を下回っている点や、②主食用米以外の収益源に乏しく、当組合の収支が主食用米の価格次第で大きく変動している点を経営課題として認識しました。ソリューションとして、①JAによる適正な施肥設計および肥料メーカーとの共同試験栽培等を通じた反収向上策、②安定した収益の見込める新品目導入およびJAによる資金対応を提案し、翌年度決算期において税引後当期利益で約9百万円の増加が実現しました。今後も策定した実行計画の進捗や効果等をフォローのうえ、当組合の農業所得向上(=付加価値額向上)に向けたサポートを継続していきます。

食農関連企業等へのバリューチェーン構築支援
当金庫は、農林水産業者所得の増加に向けた施策として、食農関連企業等への出資・融資を通じた食農バリューチェーンの構築支援に取り組んでいます。
トピック
地域産品を活用した新たなバリューチェーン構築支援
株式会社ゆう幸(以下、ゆう幸)は、秋田発菓子ブランド『くら吉』を展開し、1次加工から3次加工まで手掛ける企業です。首都圏の百貨店などに販路を有しており、高価格帯の商品販売に強みを持ちますが、原材料が県内の少数農家からの原材料仕入が中心であり、商品ラインナップが限定的という課題がありました。
そこで、集荷から販売まで一貫したバリューチェーン構築を目指すJA 全農あきたとゆう幸との連携を当金庫がコーディネートしました。
当金庫からは、ゆう幸が行う秋田県産原材料を使用した新商品開発を融資により後押しし、これにより、JA かづの(秋田県鹿角市)産「北限の桃」を使用した新商品の「くら吉」各店舗での販売を実現しました。
今後とも、生産者・産業界・消費者を繋ぐ、新たな食農バリューチェーンの構築による、農業の生産基盤維持・生産者所得の向上に取り組んでまいります。

海外食農プライベートエクイティ(PE)ファンドへの出資を通じた本邦食農バリューチェーン構築支援
当金庫は、食品・農水産業のスマート化や脱炭素技術を持つベンチャー・中堅企業等へグローバルに投資する海外食農PEファンドへ出資しています。
投資先のポートフォリオには、以下のような農林水産業の先進的な技術をもつ企業があり、当金庫としてはこれらの技術革新や社会実装を支援するとともに、本邦食品・農水産業の現場への適用を進め、脱炭素化の着実な実現を図っています。
海外食農PEファンドが支援している主な技術
- 水資源の節約や土壌改良等の再生型農業
- 牛のゲップ・排せつ物から排出されるメタンガス等を削減する飼料添加物
- 代替たんぱく質
- 青果物の鮮度保持技術(食品ロス削減等)
- 農地でのGHG固定化

「F&A成長産業化出資枠」等を通じたサステナビリティ課題解決への貢献
当金庫グループは、農林水産業の高付加価値化・生産性向上のため、系統団体および国内外との協働およびそれを支えるリスクマネーの供給を目的に、「F&A(Food and Agri)成長産業化出資枠」を設定しています。この出資枠を通じた出資により、農林水産業を取り巻くサステナビリティ課題の解決に貢献しています。
食品乾燥殺菌装置の普及を通じた食品廃棄物の削減
「サステナブルな社会の実現」に向けて、食品乾燥殺菌装置の開発・販売を手掛けるASTRA FOOD PLAN株式会社(以下、当社)に対して、当金庫グループのアグリビジネス投資育成より出資を行いました。
当社は、独自の過熱水蒸気技術(特許出願中)を用いた食品乾燥殺菌装置『過熱蒸煎機』を開発・販売する会社で、食品の製造過程などで発生する食品残渣や産地で出る規格外農作物を風味を損なうことなく乾燥・殺菌した野菜パウダーに加工し、付加価値の高い食材にアップサイクルすることに取り組んでいます。
当金庫グループは、系統組織等のネットワークを活用して当社が手掛ける技術開発や販路拡大をサポートすることで、食品廃棄物の削減と国内農林漁業及び食品産業の持続的な発展に貢献するよう取り組んでいきます。

有機栽培のさつまいも・干し芋の国内外での販売拡大と産地振興
有機さつまいもの栽培、干し芋の製造・販売を軸として、農産物の生産から販売まで一気通貫で手掛ける株式会社日本未来農業(以下、当社)に対して、当金庫グループのアグリビジネス投資育成より出資を行いました。
当社は、約50haの面積で有機栽培のさつまいも生産を行い、それを原料に、自社工場で干し芋に加工し販売を行っています。
健康食として日本のみならず、アジア・アメリカでもさつまいもの需要が高まる中、当社は、さつまいもの輸出をさらに強化することに加え、その販売網を活かして、日本の農産物及び農産加工品の輸出を広く後押しする取り組みを進めています。
加えて、その供給力を高めるため自社農場の拡大を進めるとともに、協力農家や地元の行政機関等と連携を深め、「みどりの食料システム戦略」が打ち出している有機農産物の生産拡大にも貢献しています。
当金庫グループは、系統組織等のネットワークを活用して当社が手掛ける事業をサポートすることで、国内農林漁業及び食品産業の持続的な発展や、環境・社会課題の解決に貢献し、SDGs の実現をはじめとするサステナブル経営を推進していきます。

持続可能な食料供給への貢献
食品廃棄物削減の促進
持続可能な食料システム構築に向けて、食品廃棄物※1の削減は課題の一つにあげられている中、当金庫は投融資先や系統団体での食品ロス削減の取組みを支援すべく、NTTグループの知見・ソリューションと当金庫のネットワーク・機能を活かした連携を開始しました。この連携を通じて、NTTコミュニケーションズ株式会社の提供する小売店舗向け食品ロス削減支援サービス「ecobuy」※2の導入が、JAにおいて進んでいます。
※1 食品産業全体の食品廃棄物等の発生量(2020年度):合計16,236千トン(農林水産省「令和2年度食品廃棄物等の年間発生量及び食品循環資源の再生利用等実施率(推計値」)
※2 ecobuy=…消費・賞味期限間近の「ecobuy」対象食品を購入し、購入した際のレシートをスマートフォンの「ecobuy」アプリ経由で撮影し申請していただくことで「ecobuy ポイント」がたまる仕組み。ためたポイントは「dポイント」などに交換することが可能。お店で発生する食品ロスの削減に貢献し、焼却する際のCO₂削減にも寄与。

なお、当金庫はNTTグループと、「5G関連投資」「高効率かつ省電力を実現するデータセンター」「再生可能エネルギー」などの事業を資金使途とするグリーンローンの契約を2022年8月に締結しています。
地域資源の有効活用を通じたサーキュラーエコノミーへの貢献
小川香料株式会社(以下、当社)における岡山県産農産物の有効活用や地域活性化の取組みに貢献するため、当金庫は、当社および全国農業協同組合連合会岡山県本部と事業連携協定を締結しました。
本取組みは、JAグループのネットワークを活用して農林水産物の未活用資源(廃棄される果物の皮等)を持つ生産者と当社をマッチングし、当社が未活用資源を使用して香料原料を開発するものです。具体的には、岡山県の名産品である桃の生産過程において摘み取られていた桃花を活用した「岡山県産桃花」の香料開発や、加工品製造過程で廃棄されていた白桃の皮を活用した「岡山県産白桃」の香料開発が実現しました。名産品を香料の原料として使用することで、その知名度やブランド向上も期待されます。
従来は廃棄されていた未活用資源を活用することで、農林水産業者の所得増大、環境負荷の軽減を図るとともに、香料を通じた農林水産物の付加価値向上を目指して地域一体となって取組みを進めています。
