自然関連のリスク評価とシナリオ分析

自然関連のリスク評価とシナリオ分析

当金庫では、自然関連のリスクと機会を捉えるために、事業会社向け投融資ポートフォリオ全般の依存とインパクトの分析、および試行的なシナリオ分析を実施しました。
その結果として、当金庫の基盤である農林水産業に深く関連する食品関連セクターや投融資額が相対的に大きい電力セクターなどにおける依存とインパクトが比較的高いことを確認しました。

セクター別の自然への依存

ポートフォリオにおける自然への依存の全体像を把握するため、土地(土壌の質や土地の安定性など)、気候(気候調整機能や大気による汚染の緩和など)、水(地下水、表流水など海洋も含む)、生物多様性(生き物の生息場所や受粉機能など)の4つの区分で依存度を把握しました(本分析においては、投融資先のバリューチェーンは考慮していません)。

(注)左軸のバーの大きさは当該セクターへの投融資額と比例、右軸のバーの大きさはそれぞれの依存度に該当エクスポージャーと比例
出所:当金庫作成

セクター別の支援へのインパクト

当金庫の投融資先のビジネス活動の結果として、自然資本や生態系サービスに対して、変化(インパクト)をもたらす可能性があります。過度なネガティブ・インパクトは投融資先のレピュテーションリスクや事業の源泉たる自然の劣化につながり、中長期的な財務リスクにつながる可能性もあります。一方、ポジティブ・インパクトは、自然の価値を高め、ビジネス活動の持続可能性やステークホルダーに対してポジティブな結果につながる可能性があります。
当金庫はTNFD 提言に基づき5つの自然の変化の要因(インパクト・ドライバー)について、データが取得可能な部分からポートフォリオ分析を行い、投融資先のビジネス活動によるインパクトの分析を行いました(本分析においては、投融資先のバリューチェーンは考慮していません)。

出所:TNFDv1.0より当金庫作成

(注)ボックスの大きさは、投融資額と比例
出所:当金庫作成

投融資先のバリューチェーンを考慮した分析

バリューチェーンを考慮した自然へのインパクトの状況を把握するため、九州大学発のスタートアップaiESG社と共同研究を実施しています。直接操業を対象とした分析において自然への依存とインパクトが高いことを確認した食品関連セクターを対象として、バリューチェーンの上流に至るまでの累積の環境インパクトの分析を行いました(例:食肉セクターを基点として、上流の畜産業や飼料生産・製造まで含めたGHG排出量や消費・汚染される水の量など)。

ロケーションを考慮したリスク分析

気候変動に伴う物理的リスク(急性リスク、水害リスク)の分析に用いた融資先の重要拠点(工場等)のロケーション情報を活用し、自然関連のリスクの分析を実施しました。融資先の重要拠点と保護区との関係性を地図上でマッピングすることで、保護区と重複する融資先拠点を可視化しました。
当該サイトにおける水資源や森林資源、地域の生態系へのインパクトの管理を実施していることが確認できました(当該エクスポージャーに起因する自然関連のリスクは限定的と評価)。

出所:ArcGISを用いて当金庫作成

自然関連のシナリオ分析

投資家向け自然・気候統合シナリオであるFPS+Natureを用いて、自然関連の定性的なシナリオ分析を試行的に実施しました。シナリオが想定する移行リスクの整理を経て、食品・農業セクターと深く関連する水不足、受粉に関するパラメータを対象に、FPS+Natureが提供する移行シナリオ下において想定される物理的リスクの程度を地域別、中期・長期に評価た結果、特に北米において、淡水利用にかかる追加コストや取水制限に伴う操業停止リスクが生じる可能性があることが確認できました。

出所:IPR FPS+Natureを参考に当金庫作成

気候・自然への一体的な取組み

気候変動と自然関連の物理的リスクの関連性にかかる分析

気候変動による物理的リスク(急性リスク)のシナリオ分析結果に基づき、自然資本・生物多様性の観点を考慮した分析を実施しました。水資源への依存度が高いセクターは、河川や沿岸に工場棟の重要拠点を保有する場合が多く、物理的リスクが高い傾向にあることが確認されました。
気候変動は、洪水などの災害イベントを引き起こすだけではなく、地下水の枯渇や表流水の変化、水質劣化などの自然関連の物理的リスク(急性リスクおよび慢性リスク)の要因にもなります。当金庫は、投融資先が直面する気候関連・自然関連のリスクへの理解を今後の対話やソリューション提供に活かしていきます。

分析イメージ(渇水リスクのヒートアップ)

出所: ArcGISを用いて当金庫作成
注1 グリーンが食品セクターの重要拠点、グレーがその他セクターの重要拠点
注2 n=283,287(工場等の重要拠点)

気候変動が生物多様性に与えるインパクトの分析

当金庫の投融資ポートフォリオにおけるGHG排出量(ファイナンスド・エミッション)情報を基点とした自然関連リスクの分析を行いました。気候変動が生物多様性に与える影響について、LCA(ライフサイクルアセスメント)の手法を活用しフットプリント指標(EINES指標、生物の絶滅リスクの指標)を試算しています。

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