インパクト創出・可視化に向けた取組み

当金庫は、パーパスの実現や重要課題解決に向けて、中期ビジョンを基に、食農・リテール・投資の各本部が投融資やエンゲージメント(コンサルテーション、ソリューション提供等幅広い事業支援)を通じて、適切な経済的リターンを得ながら、投融資先や各ステークホルダーの環境的・社会的にネガティブなインパクトを抑制し、ポジティブなインパクトを創出する取組みを支援しています。
当該投融資や事業支援が環境・社会課題にもたらすインパクトを可視化し、定量的な管理を可能とするインパクト計測・管理(Impact Measurement Management、以下「IMM」という)も実施しています。

インパクト創出を意図したファイナンスの事例

インパクト投資の取組み

当金庫は、グループ会社の農林中金全共連アセットマネジメント株式会社(以下、「NZAM」)と連携し、インパクト・プライベート・エクイティ・ファンド投資を実施しております。2025年3月末時点で4ファンド、112億円の投資実績となっており、気候変動のほか教育機会や医療・福祉等へのポジティブなインパクト創出を目指しています。

投資事例(Apollo Impact Mission Fund)

北米・西欧の企業を中心に、財務パフォーマンスと環境・社会インパクトが相互に高めあう案件への投資を行うファンドです。対象セクターは、①経済的機会の創出、②教育・雇用、③健康・安全・福祉、④産業・技術革新、⑤気候変動・サステナビリティとしており、欧州の投資運用事業者向けの情報開示規則であるSFDR9条(サステナブルな投資目的を持つ商品)に準拠しております。インパクト測定方法は、5 dimensions of impact(What、Who、How much、Contribution、Riskの5つの観点から企業やプロジェクトが創出するインパクトを総合的に分析する手法)による分析を踏まえインパクトKPIを設定することに加えて、B Corp(米国の非営利団体B Labによる国際認証制度で、環境や社会に配慮した公益性の高い企業に認証が与えられる)のB Impact Assessmentスコアを取得し投資先企業の客観的な環境・社会性の評価を実施しております。また当ファンドのインパクトの測定方法についても第三者のレビューを受けるなど、客観性・信頼性を担保しております。

当ファンド投資先が創出するインパクトの事例

SDGs 投資テーマ 投資先業種 インパクト概要 主なインパクトKPI
気候変動とサステナビリティ 再生紙段ボール製造 使用済みの紙製品を85%の割合で繊維ベースの包装用カートンボードにリサイクルすることで、循環経済に貢献する。特にプラスチックやバージン繊維の包装を代替し、事業の環境効率を高めるため、廃棄物、排出量、原材料の使用を削減する。
  • 炭素排出量/生産量:0.45MtCO2e/MT
  • 排水量/生産量:9.01 m3/MTなど
健康・安全・福祉 医療スタッフサービス 当社は医療人材の大手プロバイダーとして様々なサービス、専門家を提供しており、米国における看護スタッフ不足の危機を解決するのに役立っている。ケアへのアクセス増、待ち時間の短縮、患者の健康転帰の改善と同時に、医療人材に魅力的な雇用オプションを提供する。
  • 従業員満足度:66%
  • 患者満足度:69%
  • 新規有資格者数:103
経済的機会の創出、健康・安全・福祉 ヒスパニック向け食品スーパー 低中所得の顧客に、新鮮で手頃な価格の文化的に関連する幅広い食品を提供している。サービスの行き届いていないコミュニティで事業を行うことで、栄養価の高い食品への顧客のアクセス増、健康・福祉の向上に貢献する。
  • 低所得地域の店舗数:89
  • 寄付等を行った食品:$4.8milなど

出所:Apollo Impact Mission Fund Annual Impact Report 2024

グリーンボンドの発行

当金庫では2021年よりグリーンボンドを発行しています。グリーンボンドによって調達した資金は再生可能エネルギー事業など環境改善に資する事業への投融資に充当するとともに、当該投融資が創出したインパクトの計測・開示を行なっています。2025年3月末現在、資金充当先の再生可能エネルギー事業においては、年間約89万トンのCO₂削減に貢献しています。

ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み

食農関連企業へのファイナンスを通じたインパクト創出

ポジティブ・インパクト・ファイナンス(以下、PIF)は、企業活動が経済・社会・環境に及ぼすインパクトを包括的に分析・評価し、指標と目標を設定したうえ、モニタリングを通じてその実現に向けた継続的なエンゲージメントを重視したファイナンスです。

株式会社バローホールディングス(以下、バロー)は、スーパーマーケットをはじめ、ホームセンター、ドラッグストア、スポーツクラブ等を展開しており、「サステナビリティ・ビジョン2030」において、事業活動の持続可能性や、社会・環境への影響の適切なマネジメントを重視し、環境・地域社会・人々に貢献する様々なサステナビリティ活動を実施しています。

本ファイナンスにおいては、事業活動を通じた地域との繋がり、将来を担うこどもの支援、次世代に環境資源を残すといった一連のサステナビリティ活動について包括的に評価のうえ、インパクトKPIを設定いたしました。当金庫・バロー双方にとってPIFの第1号案件となっており、当金庫は農林水産業に強みを持つ金融機関としてKPI達成を支援することで、バローが目指す「100年後のこどもたちに繋ぐ持続可能な社会づくり」の実現を後押ししてまいります。

※ 当金庫主体でインパクト分析・評価およびKPI設定を行ったもの

「主なインパクトKPI」を示す図表。左側にポジティブインパクトの拡大、右側にネガティブインパクトの低減に関するKPI目標が記載されている。
食農関連企業への出資を通じたインパクト創出

JA全農と当金庫は、株式会社日清製粉グループ本社(以下、日清製粉G)と資本提携契約を締結し、日清製粉G発行済株式総数の約1%相当の普通株式を取得のうえ資本参加しています(2020年11月17日公表)。農業における環境配慮、国内農家の担い手不足といった環境・社会課題に加え、特に小麦は自給率が低く、政府による米からの転作振興により耕作面積・生産量を増加させるだけでなく、生産量の増加に合わせた需要拡大も課題となっています。このため、小麦粉国内シェア約40%を誇る業界トップの日清製粉Gとこれらの課題認識を共有し、国内産小麦の振興・需要拡大を図るべく、JA全農・当金庫にて出資を行いました。本出資に関しては三者で協議のうえで共通目標を設定し、定期的に取組状況の確認を行っており、国内産小麦振興・需要拡大の効果が徐々に出ていることを確認しています。日清製粉Gからは「国内産小麦やその他国産農畜産物の安定供給、共同開発による品揃え強化が図れている」、JA全農からは「日清製粉Gの意見をもらいながら需要を踏まえた生産・品種開発に取組めている」との声があり、当金庫としては引き続き資金面や円滑な情報連携をサポートすることで、バリューチェーン全体での課題解決に向けた三者協働の取組みを進めていきます。

本投資にて目指す環境・社会インパクトの創出に向けたロジックモデル
インパクト志向金融宣言への署名
  • 当金庫は、2022年11月1日付で「インパクト志向金融宣言(以下、当宣言)」に署名しました。
  • 当宣言は、一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)が事務局を務め、「金融機関の存在目的は包括的にインパクトを捉え環境・社会課題解決に導くことである」という想いを持つ複数の金融機関が協同し、インパクト志向の投融資の実践を推進していくイニシアティブです。
  • 当金庫は、当宣言および傘下の分科会活動への参画による他の署名機関との連携を通じて、IMMにかかる知見の更なる向上等、当金庫のインパクト創出・可視化に向けた取組みを更に高度化していきます。
  • 当金庫のインパクトファイナンスにかかる取組みについては、当宣言のプログレスレポートにおいても開示しています。詳細は以下リンクの45ページをご覧ください。

地域におけるインパクト創出・可視化の取組み

当金庫では、日本全国各地において、農林水産業の活性化や地域創生の取組みを行う各事業者に対し、ファイナンスだけではなく、事業やプロジェクトの改善・発展に資するコンサルテーションやソリューション提供を実施しています。
そのような事業支援の成果・目的の明確化、関係するステークホルダーとの意思共有、学び・改善への活用、外部へのアカウンタビリティ向上等を目的として、事業活動~短・中・長期の環境・社会的成果の経路を特定し、計測すべき成果の明確化を可能とする「社会的インパクト評価」を実施しております。
また、これまで培ったインパクト評価のノウハウを、当金庫内で活用可能な「IMMガイダンス」として整理を行い、全社的にインパクト評価を実施できる体制を整備いたしました。特定した成果指標に関しては、今後、当金庫のデータベース内で計測し、事業の成果検証・改善・情報開示に活用していきます。

四国電力と連携したアグリビジネス支援(高松支店)

当金庫高松支店では、四国電力が地域活性化を目的とした事業の一環で農業法人(いちご、ししとう)を一から立ち上げる事業に対し、事業発足当初の2018年から多面的な支援を実施してきました。今回、本事業の地域に及ぼす成果(地域課題解決への貢献)やその経路を可視化するとともに、事業が軌道に乗るまでに多数発生した様々な課題とその解決方法を会社全体の経験・知見とし、他地域でも展開できることを目的に社会的インパクト評価を実施しました。

成果(アウトカム)指標 定義/計算式
①農家の生産が向上する
  • 支援先農業法人の年間収量(t)・単収(t)
②地域産品の販売単価が上がる
  • ししとう支援先農業法人のA級品の割合
  • いちご支援先農業法人の販売単価
③農家の所得が向上する
  • 支援先農業法人の付加価値増加額(当金庫内計算式による)

未利用魚を活用した新たな水産バリューチェーン構築(大阪支店)

未利用魚とは、食べて美味しい魚ではあるが、規格外・水揚げ量が少ない・知名度が低いなど様々な理由で、非食用に回されたり、低い価格でしか評価されない魚の総称です。当金庫大阪支店では、包括連携協定を締結している兵庫県香美町や但馬漁業協同組合等と、未利用魚を活用した新たな水産バリューチェーン構築の取組みを行っています。漁獲のうち一部は洋上廃棄されている現状に対し、未利用魚の潜在的なマーケットや持続可能な活用に向けたビジネスベースでの経済効果が定量化されていないことを課題と認識し、新たな水産バリューチェーン構築の環境・社会的な成果やそれを実現する経路を特定、新たなマーケットを創出するべくインパクト評価を実施しました。

成果(アウトカム)指標 定義/計算式
①活用可能な未利用魚種の増加
  • 活用されている魚種の数
②未利用魚の商品ラインナップの増加
  • 協力加工会社との間で新たに商品化された加工品の数
③各種イベントへの参加者数増加
  • 参加者数、消費者の認知度・関心度アンケートも合わせて実施

農福連携によるポジティブ・インパクト創出(前橋支店)

当金庫前橋支店では2020年度より農福連携の取組を開始しました。本取組は、担い手減少による人手不足に課題を持つ農業者に対して、障がい者雇用の支援を通じて、農業者・障がい者双方の課題解決に尽力し、持続可能な地域社会作りを目指すものです。当金庫は、農業者との対話から農業者側の具体的なニーズを汲み取る一方、県農福関連部署や社会福祉事務所を訪問し福祉側のニーズの捕捉にも努め、個別マッチング活動や情報発信(「農福なるほど新聞」の発行)により、2024年度までに7件の連携実績に繋がっております。また、ロジックモデルを活用したインパクト評価を実施し、今後特定した課題への対応や、成果指標計測結果に基づいた事業改善を図ることで、持続可能な農業・地域、ダイバーシティの実現を目指します。

農福連携に関する事業活動と、それに伴うアウトカムを短期・中期・長期に分けて示した図。短期・中期・長期アウトカムの流れと、農業者・障がい者・JAグループへの影響が整理されている。
成果(アウトカム)指標 定義・計算式
農業分野での人手不足解消
  • 農福連携の年間作業時間(人数×時間)を、農作業の人手不足が解消された時間と定義
農作業の効率向上
  • 農福連携によって向上した農作業効率の測定(アンケート調査)
障がい者の働きがい・生きがい醸成
  • 4段階評価で幸福度を測定(アンケート調査)

3ヶ月に1回程度発行している「農福連携なるほど新聞」

耕畜連携による循環型農業実現に向けた取り組み(福島支店)

畜産農家は、輸入資料価格の高止まりで離農の危機に瀕しており、国産飼料調達のニーズが高まっています。また高齢化により小規模耕種農家の離農が進むなか、今まではある程度地域内で処理できていた堆肥処理にも困っています。耕種農家においても、中長期的な人口減少や、飼料用作物などで助成要件が厳格化するなか、本格的な飼料作物栽培を検討する必要性が出てきています。今後畜産農家・耕種農家が安定的に取引できる仕組みの構築が求められるとの課題認識から、インパクト評価により耕畜連携とそれらが創出する成果を可視化することで、ステークホルダーの巻き込み、取組のパッケージ化を目指しインパクト評価を実施しました。

成果(アウトカム)指標 定義・計算式
取引参加者が増加する
  • 耕種農家と畜産農家を引き合わせし、マッチングをした件数
飼料自給率が向上する
  • 専門農協の飼料自給率(本件実施後の飼料自給率÷本件実施前の自給率)
農業所得が増加する
  • 本件実施後の耕作面積×単収-本件実施前の耕作面積×単収
  • 本件実施後の飼料費減少額+堆肥販売増加額+堆肥処理費用減少額

「全国JAスマホ教室」で高齢者の情報格差解消・デジタルリテラシーの向上を目指す

国連が実施する世界幸福度報告では、人間関係や地域社会とのつながりが主観的な幸福に必要となる要素として定義されている一方、社会のデジタル化が進みコミュニケーションやサービスの手段が変化するなか、「情報格差」によるそうした「つながり」の分断が社会的課題となっています。全国どこでも変わりない生活の利便性の維持や、遠隔地に居住する親類・友人等とのコミュニケーション等、今日の社会においてスマートフォンは既に私たちの生活に欠かせないインフラとなっており、この活用促進が「情報格差対策」の重要な打ち手のひとつになると考えています。
JAグループでは、地域のみなさまのご要望におこたえする「全国JAスマホ教室」を2021年7月より全国的に提供し、2025年3月末時点で累計約5,800回開催、延べ約54,000名分の参加申し込みをいただきました。また本取組がどのような社会的にポジティブな効果を創出するのかインパクト評価を実施し、参加者への効果・JAへの効果を明らかにすることで、更なる施策の改善を図っております。
今後とも、デジタルサービスを活用した新たな体験の場を提供し、情報格差の解消やデジタルリテラシーの向上に向けた取組みを進めていきます。

高齢者向けのスマートフォン教室を通じたITリテラシー向上施策の流れを示す図。参加者への効果とJAへの効果が短期~長期アウトカムに分かれて可視化されている。
成果(アウトカム)指標 定義・計算式
高齢者の情報格差解消
  • スマホ教室の開催回数・参加人数
高齢者のデジタルリテラシーの向上
  • スマホ教室の複数回数参加者数
より一層信頼される金融機関
  • スマホ教室の参加者アンケートにおける満足度

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