当金庫は、パーパスの実現や重要課題解決に向けて、中期ビジョンを基に、食農・リテール・投資の各本部が投融資やエンゲージメント(コンサルテーション、ソリューション提供等幅広い事業支援)を通じて、適切な経済的リターンを得ながら、投融資先や各ステークホルダーの環境的・社会的にネガティブなインパクトを抑制し、ポジティブなインパクトを創出する取組みを支援しています。
当該投融資や事業支援が環境・社会課題にもたらすインパクトを可視化し、定量的な管理を可能とするインパクト計測・管理(Impact Measurement Management、以下「IMM」という)も実施しています。
インパクトの創出事例
当金庫では2021年よりグリーンボンドを発行しています。グリーンボンドによって調達した資金は再生可能エネルギー事業など環境改善に資する事業への投融資に充当するとともに、当該投融資が創出したインパクトの計測・開示を行なっています。2024年3月末現在、資金充当先の再生可能エネルギー事業においては、年間約72万トン (当金庫持分) のCO₂削減に貢献しています。
インパクト投資の取組み
当金庫は、グループ会社の農林中金全共連アセットマネジメント株式会社(以下、「NZAM」)と連携し、2022年度にプライベート・エクイティ・ファンド投資を可能とする投資プログラムを実施しました。2024年3月末時点で4ファンド、100億円の投資実績となっており、気候変動のほか教育機会や医療・福祉等へのポジティブなインパクト創出を目指しています。
また、当金庫およびNZAMは、プライベート・エクイティ分野のESGレポーティング標準化を目指すESGデータ・コンバージェンス・プロジェクトに参加しています。このプロジェクトは、プライベート・エクイティ分野において、運用会社がそれぞれ独自の手法で取り組んでいるESGのレポーティングに対して、100社超の投資家や運用会社が協働し、レポーティング項目等の標準化、質的向上を図り、ESGへの取組み状況を明確にするものです。これらの取組みを通じてインパクト投資の拡充を促進し、持続可能な環境・社会の実現に貢献していきます。
食農関連企業への出資を通じたインパクト創出
JA全農と当金庫は、株式会社日清製粉グループ本社(以下、日清製粉G)と資本提携契約を締結し、日清製粉G発行済株式総数の約1%相当の普通株式を取得のうえ資本参加しています(2020年11月17日公表)。農業における環境配慮、国内農家の担い手不足といった環境・社会課題に加え、特に小麦は自給率が低く、政府による米からの転作振興により耕作面積・生産量を増加させるだけでなく、生産量の増加に合わせた需要拡大も課題となっています。このため、小麦粉国内シェア約40%を誇る業界トップの日清製粉Gとこれらの課題認識を共有し、国内産小麦の振興・需要拡大を図るべく、JA全農・当金庫にて出資を行いました。本出資に関しては三者で協議のうえで共通目標を設定し、定期的に取組状況の確認を行っており、国内産小麦振興・需要拡大の効果が徐々に出ていることを確認しています。日清製粉Gからは「国内産小麦やその他国産農畜産物の安定供給、共同開発による品揃え強化が図れている」、JA全農からは「日清製粉Gの意見をもらいながら需要を踏まえた生産・品種開発に取組めている」との声があり、当金庫としては引き続き資金面や円滑な情報連携をサポートすることで、バリューチェーン全体での課題解決に向けた三者協働の取組みを進めていきます。
本投資にて目指す環境・社会インパクトの創出に向けたロジックモデル
インパクト志向金融宣言への署名
- 当金庫は、2022年11月1日付で「インパクト志向金融宣言(以下、当宣言)」に署名しました。
- 当宣言は、一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)が事務局を務め、「金融機関の存在目的は包括的にインパクトを捉え環境・社会課題解決に導くことである」という想いを持つ複数の金融機関が協同し、インパクト志向の投融資の実践を推進していくイニシアティブです。
- 当金庫は、当宣言および傘下の分科会活動への参画による他の署名機関との連携を通じて、IMMにかかる知見の更なる向上等、当金庫のインパクト創出・可視化に向けた取組みを更に高度化していきます。
- 当金庫のインパクトファイナンスにかかる取組みについては、当宣言のプログレスレポートにおいても開示しています。詳細は以下リンクの41ページをご覧ください。
地域におけるインパクト創出・可視化の取組み
当金庫では、日本全国各地において、農林水産業の活性化や地域創生の取組みを行う各事業者に対し、ファイナンスだけではなく、事業やプロジェクトの改善・発展に資するコンサルテーションやソリューション提供を実施しています。
そのような事業支援の成果・目的の明確化、関係するステークホルダーとの意思共有、学び・改善への活用、外部へのアカウンタビリティ向上等を目的として、事業活動~短・中・長期の環境・社会的成果の経路を特定し、計測すべき成果の明確化を可能とする「社会的インパクト評価」を試行的に実施しました。
特定した成果指標に関しては、今後継続的に計測を実施し、事業の成果検証・改善に活用していきます。
四国電力と連携したアグリビジネス支援(高松支店)
当金庫高松支店では、四国電力が地域活性化を目的とした事業の一環で農業法人(いちご、ししとう)を一から立ち上げる事業に対し、事業発足当初の2018年から多面的な支援を実施してきました。今回、本事業の地域に及ぼす成果(地域課題解決への貢献)やその経路を可視化するとともに、事業が軌道に乗るまでに多数発生した様々な課題とその解決方法を会社全体の経験・知見とし、他地域でも展開できることを目的に社会的インパクト評価を実施しました。
成果(アウトカム)指標 | 定量/計算式 |
---|---|
①農家の生産が向上する |
|
②地域産品の販売単価が上がる |
|
③農家の所得が向上する |
|
未利用魚を活用した新たな水産バリューチェーン構築(大阪支店)
未利用魚とは、食べて美味しい魚ではあるが、規格外・水揚げ量が少ない・知名度が低いなど様々な理由で、非食用に回されたり、低い価格でしか評価されない魚の総称です。当金庫大阪支店では、包括連携協定を締結している兵庫県香美町や但馬漁業協同組合等と、未利用魚を活用した新たな水産バリューチェーン構築の取組みを行っています。漁獲のうち一部は洋上廃棄されている現状に対し、未利用魚の潜在的なマーケットや持続可能な活用に向けたビジネスベースでの経済効果が定量化されていないことを課題と認識し、新たな水産バリューチェーン構築の環境・社会的な成果やそれを実現する経路を特定、新たなマーケットを創出するべくインパクト評価を実施しました。
成果(アウトカム)指標 | 定量/計算式 |
---|---|
①活用可能な未利用魚種の増加 |
|
②未利用魚の商品ラインナップの増加 |
|
③各種イベントへの参加者数増加 |
|