人的資本価値向上に向けた取組み
人材マネジメントに関する基本的な考え方
ビジネス環境・働き方・価値観等、世の中の変化のスピードが加速しているなか、将来にわたって発展を続け、パーパスの実現・発揮に繋げていくためには、自律的に専門性を磨いて活躍できる組織に変革していくことが必要と考えています。こうした認識に基づき、当金庫においては人材マネジメントポリシーを定め、自律的にチャレンジ・変革し続ける人材を継続的に支援しています。
「自律性」と「専門性」を柱とする人事制度の構築
人材マネジメントポリシーのもと、職員が自律的に専門性を高めていき、組織の内外で活躍できること、その結果を組織の発展に繋げていくことを目指し、「自律性」と「専門性」をコンセプトの柱とする抜本的な人事制度改正を2023年4月に実施しました。
2024年度からは、「誰のために、何の価値を、どのように提供するか」という観点で業務を区分した「ジョブグループ」を設定し、運用を開始しています。これは、職員が自らの希望と職務履歴に基づきジョブグループを登録し、以降は原則として当該ジョブグループに関連する業務を担うことで、中長期的に専門性を醸成していく仕組みです。
また、自律的なキャリア形成に向けて、業務分野を自ら選択できる公募制度や、国内外での業務経験機会提供のための各種トレーニー制度、活躍領域の拡大を目指す職員のためのコース転換制度などを整備し、業務を通じた職員の自己実現を支援しています。
更に、業務を問わず共通して求められる要素(コンピテンシー)を定義した「共通コンピテンシー」に加え、個別業務における専門性の評価・育成の基準として「ジョブコンピテンシー」を設定し、上司との定期的な個別面談を通じて、必要となるコンピテンシーの確認、業務においてコンピテンシーが発揮された行動の振り返りとその評価、および今後に向けたフィードバックを行うことにより、各職員の専門性醸成に向けた取組みを後押ししています。
事業戦略と人材戦略の連動
人材マネジメントポリシーに基づく人事制度と、中期ビジョンにおける2030年のありたい姿の実現に向けた事業戦略とを連動させる観点から、事業戦略実現のために必要な人材群の形成に取り組んでいく枠組みとして、人材ポートフォリオ戦略を策定しています。
人材ポートフォリオ戦略においては、組織全体における専門性・多様性ある人材群の形成に加え、事業戦略の達成に必要な専門性をバックキャストで特定したうえで、一層の強化が必要な個別人材群をトップダウンで設定し、その育成・配置について継続的にPDCAを回していくことで、戦略的な人材群形成を図ることとしています。
ジョブグループ制度
ジョブグループ制度は、職員が自らの希望と職務履歴に基づきジョブグループを登録し、以降は原則として当該ジョブグループに関連する業務を担うことで、中長期的に専門性を醸成していく仕組みです。
ジョブグループごとに「グループジョブディスクリプション」を策定し、機能別・職階別に必要な専門性を定義しているほか、専門性の評価・育成の単位である「ジョブコンピテンシー」の導入により、専門性向上を図っています。
また、若手層を中心としたアソシエイト層の職員に対しては、将来のジョブグループ登録を見据え、異動ローテーションによる機会提供を行うとともに、各グループの業務を短期間経験できる「社内インターン」や、次に従事する業務分野を自ら選択できる「ジョブセレクション」といった公募制度を導入しています。
人材育成にかかる取組み
ジョブグループごとの育成体系の強化
ジョブグループ運営とあわせて、ジョブグループごとの育成体系の強化を図り、専門性醸成に繋げています。たとえば、食農ビジネスにかかる専門性を醸成する食農グループにおいては、実効性ある人材育成に向けて「OJT」と「Off-JT」を効果的に結び付けた取組みを展開しています。「OJT」では、ジョブコンピテンシーを上司・部下間の共通のものさしとしながら、1on1ミーティングにおける日々の行動レベルの振返りと業務実践のサイクルを通じた成長支援を行い、「Off-JT」では、専門性のレベルに応じて体系化された研修の受講を後押しします。研修では、学びの活用・定着を意識して、顧客提案等に繋がる実践型の内容にすることで着実なスキルアップを図っています。
組織横断的な育成体系の充実
(1)リーダー・マネジメント養成
人材マネジメントポリシーに基づく人材育成を着実に進めるには、リーダー層・マネジメント層の役割発揮が重要です。求められるリーダーシップやマネジメントスキル、部下育成に効果的な対話力等を身に付けられるよう、階層に応じた研修体系を整備しています。また、「受講して終わり」とならない、職場での実践と連動させた研修プログラムによって定着を図っています。
(2)多様な経験・思考の獲得
多様性のある人材群の形成に向けて、金庫内では得られない発想、価値観、働き方等に触れる機会として、越境研修(所属組織の枠を超え、異業種での業務経験や異業種社員と交流を図りながらともに学び、共創する経験)を展開しています。
(3)自律的なキャリア形成
職員の自律的なキャリア形成に向けて、コース(職種)を問わず、スキルアップ・リスキリング支援やキャリア自律支援を行っています。また、海外拠点での業務経験機会として海外トレーニー制度や公募での海外留学制度(MBA、LL.M)も実施しています。
採用にかかる取組み
人材ポートフォリオ戦略に基づき、専門性・多様性のある人材群や、一層の強化が必要な個別人材群を形成する手段の一つとして、キャリア採用(中途採用)を強化しています。具体的には、キャリア採用目標を昨年度対比で1.5倍に増加するとともに、採用手法の拡充を図り、業務領域別の採用を拡大すべく募集ポジションの細分化を進めています。また、特定の専門性醸成を志向する人材に向け、新卒採用において、初期配属部署を特定したコース別採用も導入しています。
多様な働き方にかかる取組み
専門性・多様性のある人材群形成にあたり、様々な職員が、結婚・出産・育児・介護等、多様なライフイベントに合わせた働き方を選択することを可能にし、一人ひとりが多様なキャリア形成を自律的に行っていくことができる環境を、継続的に整えていきます。
企業文化の浸透に向けて
役職員がパーパスに共感できる組織であり続けるため、またそのパーパスの実現・発揮に向けた日々の業務の土台となる「共有価値観」の浸透を目指すため、当金庫は様々な施策を展開しています。以下ではその一例をご紹介します。
Myパーパスプロジェクト
役職員が「何のために・誰のために」働くのか、その意義を再認識するきっかけを提供することを目的として「Myパーパスプロジェクト」を2022年度から開始しました。
その一つとして、役職員が農家に出向き農作業を行う「JA援農支援隊」を実施しています。2024年3月末までで計23回、延べ603名の役職員が参加しました。
「JA援農支援隊」の様子
社内広報の取組み
役職員がパーパスに共感し、パーパスを自分事化できている状態を目指し、職員が共有価値観に沿って実施した優良な取組みや、多様な人材が社内で活躍する姿を「社内広報」を通じて発信しています。2023年度は計74回の情報発信を行いました。
職員エンゲージメントの向上に向けて
当金庫では、毎年1回以上、職員を対象としたエンゲージメント調査(組織能力調査)を実施しています。調査結果は理事会などで報告し、結果分析や課題の整理などを通じて、効果的な施策を検討・実施することで、職員が仕事内容や職場環境に価値を感じ、エンゲージメントを高め、これらの結果として組織の活力向上に繋がる姿を目指しています。
ハラスメント対策
セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、妊娠・出産ハラスメント、育児・介護休業ハラスメントなど職場におけるハラスメント防止については、階層別研修や
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ラーニングによる研修実施のほか、各部店の人権責任者、人権担当者による指導・相談、外部相談窓口の設置など、さまざまな取組みを行っています。
職員からの個別の相談を受け付ける窓口として、ハラスメント相談窓口を設置・運営しており、職員が必要な時にすぐに相談できるよう周知徹底を図っているほか、関係者のプライバシー保護と迅速な対応にも取り組んでいます。職場の心理的安全性の確保に向け、ハラスメント行為の未然防止に注力するとともに、ハラスメント相談窓口機能の強化に取り組んでいます。
労働安全衛生
当金庫では、職員が健康で安心して仕事ができるよう、職員が業務に専心できる環境づくりに力を入れています。当金庫では、中央衛生委員会が毎年、健康管理方針を策定しています。健康管理方針では、職員の心身の健康管理強化に取り組むとともに、健康増進支援に向け、各種施策を実施することを定めています。
職員による定期健康診断の完全受診に取り組むとともに、家族の健康診断受診を促進しています。また、健康診断結果に応じて、産業医および医療系スタッフによる健康指導を行っています。この他、長時間労働による職員の健康への影響を踏まえて、労働時間の抑制に取り組んでいます。
職場におけるメンタルヘルス対策の一環として、職員自身が行うセルフケアの充実や、カウンセリング等の相談機能の提供、各階層別研修でのメンタルヘルスにかかる周知・啓発を行っています。また、ストレスチェックの実施や、いつでも利用できるセルフチェック機能の提供のほか、本店医務室にメンタルヘルス相談室を設置し、随時相談に応じています。
職員の健康意識を向上させ、日常的に適度な運動をする習慣を定着させるために、さまざまな啓発活動や福利厚生サービスの提供を行っています。具体的には、スポーツクラブの補助や、健康づくりリーダーを中心とした健康づくり活動を進めています。
労使関係
当金庫では、経営と相対する組織として従業員組合が設置されています。また、当金庫の従業員組合はユニオンショップ制を取っており、入庫と同時に原則として全員が組合員になっています。
当金庫の従業員組合は、組合員の労働条件の維持改善、その他重要事項について経営と交渉する権利を有しており、また経営と交渉するための組合員向けアンケートの実施や、それらの結果を踏まえて経営に各種提言を行う場を設置しています。経営は、組合員の生活や働き方に大きな影響を与える人事労務関連制度等の変更に際しては、経営協議会、労使委員会等で従業員組合と合意しなければならないとしています。