食と農林水産業のファーストコールバンクへ
事業内容
食農ビジネスの深化に向けて
農林水産業の成長産業化や所得水準の向上、生産基盤の強化に向けて付加価値を創出・提供する食農ビジネスは、生産者を支援するだけでは実現できるものではありません。生産に用いられる機械・資材の製造から、農林水産物の加工・流通・外食・小売・輸出・消費まで、食農バリューチェーン全体を見渡して取り組むことが必要です。川上から川下まで広く取引を有する強みを活かし、全国の農林水産業者と1,700社にのぼる顧客企業の「架け橋」となって、生産者と企業との案件コーディネートを行い、所得向上やサステナブル課題対応、取引先企業が抱える事業課題の解決などにも結びつく質の高い事例の積上げに取り組んでいます。
食農ビジネスの深化との両輪で、農林中金グループの専門性を活かした役務提供や新たな商品分野を含む投融資拡大および金利・景気変動耐性を有する貸出ポートフォリオの構築に取り組み、食農法人営業本部の収益規模の拡大を目指しています。
中期ビジョンにおける食農ビジネス
2030年の課題認識(食農ビジネス)
- 人口減少・少子化が進み高齢化が加速している。第一次産業の担い手である個人経営体は減少し、法人経営体にシフトしている。
- スマートアグリ市場の進展に伴い、ロボットトラクタ、ドローン等による労働代替等、ITデジタルを活用したアドバイザリー機能の提供が期待されている。食農×デジタルの活用が一層加速している。
- 地政学リスクへの意識から、生産資材価格の高騰等の課題が顕在化し、食農バリューチェーンにおける生産性と持続性の向上が不可欠になっている。食料安全保障の基礎となる国内生産基盤と循環型農業の構築が求められている。
- J-クレジットをはじめ自然由来のクレジットの活用も注目を高めており、サステナブル分野の取組みについては、引き続き高い期待を受けている。
「2030年のありたい姿」の実現に向けた考え方
ITデジタルを活用したアドバイザリー機能の提供といったデータビジネスの展開、既存のバリューチェーンにとらわれない新たなグローカルなバリューチェーンの構築等に取り組むことで、農林水産業者や系統団体の持続的な発展を実現してまいります。また、所得向上と相互に連関する食料安全保障も踏まえた「生産基盤維持」「環境に配慮した持続可能な農業」にも注力してまいります。
実現のために重要なキーワード
主な取組み
担い手の所得向上に向けた取組み
担い手コンサルティング活動の強化

当金庫は、「JAバンクの担い手コンサルティング」として、JAおよびJA信農連と連携し、担い手へのコンサルティング活動を強化しています。本活動はJAバンク(JA・JA信農連・当金庫)が主体となって実践しており、2023年度は306先の担い手に対して実践しました。
本活動は、まずJAの信用事業部門(金融事業)またはJA信農連や当金庫が主体となって担い手の財務分析やヒアリングを実施し、定量・定性の両面から事業性評価を行います。そこで明らかになった担い手の各種経営課題に対してソリューションを提案するものです。このソリューションについては、JAの信用事業部門のみならず、JAの営農経済事業部門などとも連携した提案を行っており、JAグループが持つ総合力を発揮して、金融に止まらない幅広い提案を行う点が特徴です。また、ソリューションを提案した後も、課題解決に向けた取組進捗のフォローなど、継続的な担い手へのサポートに取り組んでいます。

担い手コンサルティングの流れ
食農バリューチェーン構築・強化の取組み
農林漁業・食農関連企業への成長資金の供給

農林漁業者および食農関連企業に対する出資機能として、グループ会社のアグリビジネス投資育成(株)を通じた成長資金を広く供給しています。足元では、有機さつまいもを50haの面積で生産し、それを原料として干し芋に加工のうえ国内外に販売する法人や、独自の乾燥技術で農産物の規格外品や端材を粉末化し、未利用資源のアップサイクルに取り組む法人など、様々な成長ステージの農業法人や企業へ出資を行い、これまで累計で719件・約160億円(2024年3月末時点)と国内で最大規模の投資実績を確保しています。
※上記グラフのうち、2021~2023年度で上段の色が異なる部分は食農関連企業向けです(ほかの部分は農業法人をはじめとする農林漁業法人向けです)。四捨五入のため、各数値の合計が一致しない場合があります。また、食農関連企業向けの出資件数・出資額には当金庫からのF&A成長産業化出資枠の移管分が含まれます。

農林水産業者の所得向上のための取組み
国産農林水産物の輸出サポート

輸出意欲のある農林水産業者に対して、当金庫が持つネットワークを活かして国内商社や海外事業者の紹介等を行い、農林水産物の輸出拡大を支援しています。
今回、当金庫仙台・青森支店は地域産品である「帆立と野菜の玄米スープ」の輸出支援を行い、シンガポール向けに初の輸出を実現しました。
この輸出支援の取組みにあたっては、当金庫のシンガポール支店も連携し、サンプル品の輸出から着手したうえで商品性のみならず、この商品が作られるに至ったストーリー性なども現地バイヤーに紹介しました。その結果、現地バイヤーから高く評価され、初の輸出に繋がりました。

森林由来クレジットの創出・販売サポート
JForestと連携したプラットフォームの立上げ

カーボンニュートラルへの取組みが世の中全体で加速するなか、森林由来のカーボンクレジットへの関心が高まっている情勢を踏まえ、当金庫は2022年度にJForest全森連との共同で森林由来クレジットの創出をサポートするプラットフォーム「FC BASE-C」を立ち上げました。森林由来クレジットの創出に取り組む森林組合(JForest)のサポートを目的に、J-クレジット制度の解説やCO₂吸収量の簡易計算から、説明会の開催申込み、プロジェクト計画書等の作成に向けた窓口機能まで幅広いサポートメニューを提供しています。
また、2023年度には、全国の森林組合、地方自治体等が創出した森林由来クレジットの販売サポートを行うプラットフォーム「FC BASE-M」を立ち上げ、「FC BASE-C」と合わせて、JForestグループによる森林由来クレジットの創出・販売を一気通貫でサポートする仕組みが整いました。2024年3月には第1号案件となる売買が成立しています。J-クレジットの販売代金は、全国の森林組合などが将来の森林整備などに充てることができ、持続可能な森林管理に向けた後押しが期待されます。今後も当金庫はJForestグループと連携した森林由来クレジットの取組拡大に注力し、持続可能な森林管理の後押しを通じて、脱炭素社会実現へ貢献してまいります。
