本分野では、これまで蓄積してきた食農智を活用し、投融資や事業連携、そして新たなイノベーションの創出等を通じて、地域・そして自然環境の保全・発展に貢献し、農林水産業を持続可能な成長産業とするようステークホルダーと協働して取組みを進めることを目指します。
課題と取組方向
課題 | 取組方向 | |
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課題1-1 | 持続可能な農林水産業への貢献 | 食農ビジネスの取組みやステークホルダーとの協働により、持続可能な農林水産業の実現に貢献する。 |
課題1-2 | 安心・安全な食料供給への貢献 | 組織として有する食農智を活かし、人々の豊かな食生活の実現に貢献する。 |
課題1-3 | 持続可能な地域コミュニティへの貢献 | 農林水産業の基盤となる全国津々浦々にわたる地域での諸課題の解決と持続的な発展に向けて貢献する。 |
課題1-4 | 農林水産業の基盤としての自然環境の保全 | 農林水産業の持続的な発展の前提となる、土壌、森林、河川、海洋などの自然環境の保全に貢献する。 |
課題1-5 | ビジネスイノベーションの創出 | 新たな技術やビジネスモデルを創出する投資や事業連携により、農林水産業の持続的な発展に貢献する。 |
主な取り組み
- 農林水産業者向けの金融支援、経営課題解決のソリューション提供
- 食品廃棄物削減の促進
- 一般社団法人農林水産業みらい基金をはじめとした農林水産業と地域活性化支援
- 食農教育活動
- 次世代の農業経営者を育成する日本農業経営大学校との連携
- 企業と連携した植林活動
- スタートアップ企業支援を通じたビジネスイノベーションの創出
関連するSDGs
持続可能な農林水産業への貢献
「F&A成長産業化出資枠」等を通じたサステナビリティ課題解決への貢献
当金庫は、農林水産業の高付加価値化・生産性向上のため、系統団体および国内外との企業との協働およびそれを支えるリスクマネーの供給を目的に、「F&A(Food and Agri)成長産業化出資枠」を設定しています。この出資枠を通じた出資により、農林水産業を取り巻くサステナビリティ課題の解決に貢献しています。
バイオマス原料を用いた化学品の普及
地球温暖化対策として脱化石燃料や温室効果ガス(GHG)排出削減が世界的な課題となる中、化学品の原料を従来の石油由来からバイオマス由来にシフトする動きが活発になっています。これを踏まえ、当金庫はバイオマス原料を用いたグリーン化学品生産技術を提供するGreen Earth Institute株式会社(以下、当社)に、「F&A成長産業化出資枠」を通じた出資を行いました。
当社は食料や飼料と競合しない、植物の茎や葉などのバイオマス原料や農業残渣・食品残渣から、エタノールや食品・飼料添加物のアミノ酸などを生産する技術を研究・開発し、バイオマス由来製品の普及・サーキュラーエコノミー実現に取り組んでいます。この取組みを通じてバイオマス由来製品の普及が進むことで、脱炭素化や廃棄物の削減、海洋汚染の防止につながることが期待されています。また、今回の出資を契機に、当金庫のネットワークを活かした当社との連携を進め、農業残渣・食品残渣の利用および高付加価値化により、農林水産業者や食品製造事業者などの廃棄物処理の課題解決に貢献していきます。
大豆由来の植物肉の普及推進
世界的な人口増加に伴う“タンパク質危機”、環境問題深刻化、さらにはエシカル消費の高まり等を背景に、代替タンパク質として植物肉に注目が集まっています。当金庫は、2020年度に、植物肉の開発・生産・販売を行う熊本県のDAIZ株式会社(以下、当社)に対して出資を行いました。当社は、従来の搾油後の大豆ではなく、大豆そのものを発芽させた原料を使用する独自の製造技術により、栄養価が高く、食肉に近い旨味・食感・香りを再現した植物肉「ミラクルミート」を開発しました。当社の国産大豆を利用した植物肉の普及に向けた取組みに、当金庫は出資だけでなく販路の紹介等の多様な支援を行うことで、食料問題や環境問題の解決のみならず、国産大豆の消費拡大、農業生産者の所得向上にもつなげていきます。


大豆由来の植物肉を使用した製品
ウニの畜養事業への取組み支援を通じ藻場を回復
海生生物の住処である藻場は、CO₂吸収機能(「ブルーカーボン効果」)を有しており、近年注目を集めています。一方、実入りの少ないウニを磯に放置すると、これらウニの食害により磯焼けの原因となるといわれています。磯焼け現象は日本の沿岸ほぼ全域で顕在化し、環境問題となっています。
こうした課題を解決するため、当金庫はウニノミクス株式会社(以下、当社)と協業を開始しました。当社は、実入りの少ないウニを捕獲し、独自の給餌をはじめとした畜養システムにより、実入りを多くして出荷するビジネスモデルを確立しました。
当金庫は、こうした課題と課題解決に向けての当社ビジネスモデルについて世の中に認知してもらうことを目的にセミナーに共同で出講。また、このビジネスモデルを当社支援の下で展開する水産会社に対して融資を行い、藻場回復による持続可能な水産業、環境課題の解決に貢献しています。

安心・安全な食料供給への貢献
食品廃棄物削減の促進
持続可能な食料システム構築に向けて、食品廃棄物※の削減は、課題の一つにあげられています。
当課題の対応として、当金庫は株式会社セブン&アイ・フードシステムズ(以下、当社)と連携。当社が運営するレストランチェーン「デニーズ」店舗から排出されるコーヒー豆かすを、酪農家が肥育飼料として利用する取組みの支援を行いました。
なお、この酪農家で生産された生乳が加工されてホワイトソースとなり、デニーズ店舗のメニューに利用され、循環型モデル(リサイクルループ)が実現しています。
※ 食品産業全体の食品廃棄物等の発生量(2019年度):合計 17,556千トン(農林水産省「令和元年度食品廃棄物等の年間発生量及び食品循環資源の再生利用等実施率(推計値)」)

次世代の農業経営者を育成する日本農業経営大学校との連携
日本農業経営大学校は、次世代の農業経営者および地域農業におけるリーダー育成という目的のもと、当金庫をメインスポンサーに、会員企業の応援を得て、2013年に開校し、これまでに115名の卒業生を輩出してきました。
2023年4月に開校10年の節目を迎えるにあたり、オンライン教育をはじめとした教育のデジタルトランスフォーメーションの実現や、アグリビジネスにおいて活躍するイノベーター育成の展開等、次の10年に向け新たな価値提供の在り方にも挑戦していきます。

卒業後の就農状況
2022年3月31日現在

※親元には祖父母および親戚を含む
第1期生(長野県中野市で就農)阿部 宏規 さん

卒業後は、実家のある長野県中野市でプラム経営を始めました。就農時、長野県果樹試験場が育成したプラムの新品種が話題で、プラム経営の発展につながればと期待を込めて、圃場を確保しました。販売面では、JA中野市への出荷をメインに、顧客への直売やふるさと納税返礼品としての出品等、販売ルートの多角化に努めてきました。また、請求書などの事務書類やパンフレット、出荷箱の作成などにも取り組みました。今後も中野市の農産物や自身の作ったものを消費者に伝えられるような取組みを考案していきます。中野市には若手農業者が多く、栽培についての情報交換やプライベートでの交流など、充実した日々を過ごしています。将来的には、両親が営むぶどう栽培を経営統合し、プラム、ぶどう両方の作業を考えた栽培計画を立てる予定です。まだまだ学ぶことが多くありますが、一つひとつ課題を乗り越えていきます。
農泊を活用した地方創生支援
農山漁村地域に雇用と所得を生み出す“稼げるビジネス”として、「農泊」事業が推進されています。2020年に、JA全農、農協観光、日本ファームステイ協会とともに四者連携協定を締結し、農泊事業の確立・推進強化を通じた地方創生の実現に取り組んでいます。
当金庫では、JAバンクとしての金融機能(農泊ローン等)を提供するほか、幅広い取引基盤を通じた連携コーディネートを行っています。
農泊実践を通じた地域活性化、農村・農業の振興
上記四者は、2021年9月から翌年1月にかけて、ビジネスパーソンを対象としたキャリア講座を提供する「丸の内プラチナ大学」にて、農山漁村地域の活性化に資する取組みとして“農泊”をテーマに講座を開講しました。本取組みは、大丸有エリア(大手町・丸の内・有楽町エリアの略称)内外の連携や協働、同エリアのまちづくり推進を行うエコッツェリア協会((一社)大丸有環境共生型まちづくり推進協会)に協賛する形で行われたものです。
本講座は、都市と農村の交流による課題解決や地域のファンづくりを通じた持続可能な地方創生を目指し、全6回の座学のほか、農泊推進地域でのフィールドワークを実施し、都市・地域住民の交流を図りました。

ビジネスイノベーションの創出
オープンイノベーションの拠点「AgVenture Lab」
JAグループは、2019年、「次世代に残る農業を育て、地域のくらしに寄り添い、場所や人をつなぐ」をコンセプトに、イノベーションラボ「AgVenture Lab」(アグベンチャーラボ)を東京・大手町に開設しました。
ラボでは、JAグループのさまざまな事業と、技術やアイデアを持ったスタートアップ企業やパートナー企業、大学、行政等を結び付け、さまざまな知見やテクノロジーを活用しながら、新たな事業創出、サービス開発、社会課題の解決を目指します。ハード面では、スタートアップ企業等に向けたコワーキングスペースを設置。またソフト面では、スタートアップ企業等からビジネスプランを募り、JAグループの強みを活用した新たなビジネスモデルの創出を目指す「JAアクセラレーター」プログラムを柱に、イノベーションの加速を図ります。
2021年5月、「JAアクセラレータープログラム第3期」に参加する企業を選抜するためのビジネスプランコンテストを開催し、本プログラムに参加する9社を決定しました。
本プログラムは、「食と農とくらしのイノベーション」をキーワードとして、JAグループで展開する幅広い事業を対象に、FinTech のみならず AgTech や FoodTech、LifeTech などにかかるビジネスプランを募り、JAグループの強み(店舗をはじめとする各種インフラ、顧客ネットワークほか)も活用して新たなビジネスモデルの創出を目指すものです。
AgVenture Labの取組領域

「JAアクセラレータープログラム第3期」ビジネスプランコンテスト 受賞企業 | |
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<ビジネスプランコンテスト優秀賞>「JAアクセラレータープログラム第3期」参加企業 | |
EF Polymer Pvt. Ltd. | 生ゴミから作る、干ばつや土壌劣化を解決するオーガニックポリマー |
株式会社エアロネクスト | 空を活用した新スマート物流 |
エンゲート株式会社 | 「世界初の」スポーツ特化型SNSギフティング |
株式会社Ciamo | 廃棄物で作る「光合成細菌」で持続可能な農業と水産養殖の実現 |
株式会社事業革新パートナーズ | 植物由来バイオプラスチックHEMIX農林水産業連携 |
株式会社地元カンパニー | ストーリーを流通させる「地元のギフト」 |
東京ロボティクス株式会社 | 自律協働ロボットで選果場の人手不足を解消 |
株式会社MISOVATION | 味噌汁で世界の予防医療にイノベーションを起こす |
KAERU株式会社 | 超高齢社会のスタンダードな決済 |
<イノベーティブ賞>本プログラム外でアライアンスや支援の検討対象となる企業 | |
株式会社IB、株式会社エクセルシア、AUDER株式会社、輝翠TECH株式会社 、forent株式会社、株式会社Momo |