道の駅田切の里(長野県)

商業施設の空白地域に道の駅を
「当時、田切地区では最後のスーパーが閉店し、商店は存在していませんでした」と、現在「道の駅田切の里」副社長を務める下島修さん(67)は振り返ります。
田切地区は、長野県飯島町の中で最も少子高齢化が進んだ地域。人口減少にともない、商店も全て閉店。生活基盤を失った住民にとって、商業施設の復活が切迫した課題となっていたのです。
転機は、2010年頃に国道153号バイパスの延伸計画が発表されたこと。「道路が整備されるのに、車両の通過を見ているだけでいいのか」と、地区住民から声が上がったのです。
この要望は、地域の発展や福祉を検討する自治組織「田切地域づくり委員会」で討議され、町や国との間で交渉が始まることに。地域住民に2度のアンケートを行ったところ、やはり住民の強い要望が明らかとなりました。この結果を踏まえて、地域の人々が活用できる施設を併設した道の駅の構想がまとめられ、設立準備がスタートします。
住民の8割が道の駅の株主に
設立準備を進める上で、大きな焦点となったのが道の駅の運営主体でした。一般的に道の駅の運営は、行政や地域の企業が中心となっています。しかし、住民の声を反映した運営のためには、住民自身が株主になるべきだとの声が上がり、結果として、田切地区の住民の約85%が「株式会社道の駅田切の里」に出資しました。また、田切地区は農業が盛んな土地柄で、住民の多くがJAの組合員だったこともあり、JA上伊那も道の駅の運営会社に対して出資を行うこととなりました。
「開店準備では、JAの経済事業に携わってきた職員から、商品の展示方法や物流についてアドバイスをもらいました。農産物直売所の運営や移動販売車で取り扱う日用品の供給など、JAにはサポートしてもらっています」。自分自身も田切地域の住民である下島副社長は、JAとの連携のメリットをこう語ります(※)。
2016年7月中旬、「道の駅田切の里」のオープン当日。真新しい建物の前には開店前から数十人以上の人々がつめかけていました。「当日は、地区内だけではなく、周辺からも大勢のお客様がお越しになられました」と下島副社長。
現在、道の駅の店内では、お土産以外にも魚や肉などの食品や日用雑貨が並び、地元の人々の生活を支えています。また、オープンの翌年からは、移動販売車・宅配車のサービスを開始し、高齢者や一人暮らしの人の買い物も支援してきました。
さらに、生活必需品以外にもさまざまな機能を提供しています。毎月のようにイベントが開催され、地域住民の交流の場としても活用。防災用品の備蓄倉庫を設置するなど、防災拠点としての役割も担っています。
地域のニーズを汲み取った経営を行う「道の駅田切の里」。その背景には、住民参加で地域と農業を作り上げてきた飯島町ならではの取り組みがありました。
- JA上伊那による道の駅の運営への協力は、まち・ひと・しごと創生本部によって「地方創生に資する金融機関等の特徴的な取組事例」として選定されました。
道の駅で地元農家の商品を販売
田切地区で農家を営む大島基さん(70)。地元農家の次男として生まれ、若い頃に都会に出たものの、定年を機に地元へ戻りました。そして、父親から農地を譲り受けてリンゴの専業農家へと転身。
大島さんの最近の生きがいは、道の駅でのリンゴの販売。手作りのリンゴジュースも人気です。娘さんが後継者として活躍し、若い感性を活かした商品作りにも工夫を重ねています。
「年金をもらいながら、地元に戻って農業に就く、というのも一つの選択肢」と大島さん。道の駅ができたことで新しく商品の販売機会が生まれました。
生活必需品を供給するだけでなく、地元の農家の商品を販売することによって、「道の駅田切の里」は地域に新たな活気をもたらしています。
