気仙沼かなえ漁業(宮城県)
宮城県にある気仙沼漁港は、水揚げ額154億円で全国10位、水揚げ量6.5万トンで同11位(2019年度)という日本有数の漁業基地です。
このうち、近海マグロはえ縄漁業は、メカジキ・ヨシキリザメを主要魚種とし、水揚げ盛漁期が他の漁法による魚種(サンマ、カツオ)と異なるため、気仙沼魚市場における通年の収益安定化に貢献し続けています。
しかし、最盛期の1970年代には120隻を超えていた気仙沼の近海マグロはえ縄漁船は減少を続け、2015年以降、12隻にまで減ります。マグロ類の減少を受けた魚種転換、マグロ類の魚価の下落、漁業者の高齢化、漁船の老朽化……廃業・減船する漁業者が増えていくなか、東日本大震災も追い打ちとなりました。
この経営環境の悪化を受け、近海マグロはえ縄漁で競合してきた6社が危機感を共有。切磋琢磨してきたライバル同士が手を取り合い、協業を模索し始めます。きっかけは、被災した漁業者に国が復興資金を供給する「がんばる漁業復興支援事業」の第2弾が2016年度にスタートしたこと。条件となる地域漁業復興協議会を立ち上げた際、協業化も議題に据えられたのです。
当初はグループ操業や漁業生産組合など緩やかな協業の形を望む声もあり、協業への参画を検討する漁業者には、自社の重要な資産である漁船を譲り渡すことへの不安もありました。
しかし、「がんばる漁業」の取組みとして6社で漁場情報の共有や仕入の共通化を試行した結果、燃料や漁具のコスト削減に成功。需要に応じた各社の水揚げ量の分散により魚価の安定・引き上げも実現したことで、新会社設立と事業の統合という徹底した協業に向けて、6社の足並みが揃います。
2018年10月に新会社として「気仙沼かなえ漁業株式会社」が発足。2019年9月には初の水揚げが実現し、同年12月には新船第1隻目の「かなえ丸」が初出港を果たしました。こうした成果について、6社を代表する形で社長を務める鈴木一朗さんは、「農林中金が親身になって相談に乗ってくれたおかげでもあります」と語ります。
新会社の経営体制や、6社が保有していた漁船8隻を新会社に譲渡する適正価格を決めるなどの検討課題をめぐって協議が膠着した際、「農林中金が専門金融機関としてノウハウを生かしてアドバイスしてくれた」ことが非常にありがたかったとのこと。また、農林中金は、老朽船の代船実現に向けて建造計画の策定を支援し、共通船型にて新船3隻を建造することについて「もうかる漁業」の承認を得るとともに、日本政策金融公庫と協調して新船1隻目の建造資金・5億4800万円の融資※を実行しています。
「農林中金には6次化商品の検討など次々と尻を叩かれています」と笑う鈴木社長。新会社は新たな事業展開で地元に波及効果を生み出すことまで狙っており、農林中金による金融と非金融、両面でのサポートに、これまで以上の大きな期待が寄せられています。
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