みやぎサーモン(宮城県)
いま世界的には水産物の消費量は増加していますが、日本においては、漁獲量も魚の消費も減少しています。しかし、そんな状況でも、日本で需要が高まっている魚種があります。それが、ギンザケ(サーモン)です。ギンザケは日本の川には遡上しませんが、長年、養殖が行われてきました。養殖ものは、寄生虫などがほとんど検出されず生食に適しており、子どもにも人気が高い食材です。
ギンザケの養殖は、宮城県が国内シェアの90%以上を占めてきました。ところが近年、安価な輸入品が増加していることに加えて、国内でも新たに養殖を始める地域が現れてブランド化を進めるなど、年々競争が激化しています。
そこでさらに競争力を持った養殖サーモンを目指して始まったのが、飼料用米配合飼料によるギンザケ養殖プロジェクトです。それまで宮城県のギンザケ養殖業で使われていた飼料のうち、8割以上が輸入した配合飼料でした。相場変動の激しい魚粉など輸入原料から脱却し、国産原料を使用することで生産原価を安定させるとともに、海外産の養殖サーモン等との差別化を狙いました。
そこでJFみやぎの山下貴司さんらが事務局を務める「みやぎ銀ざけ振興協議会」が中心になって、JFみやぎ、JA全農みやぎ、東北大学が協力し、宮城県産の飼料用米を餌として用いる養殖ギンザケの開発に着手しました。
開発には、国の革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)も活用しました。スタートから約2年、技術面での困難を乗り越え、飼料用米を、すぐに水中に沈まないといった特性を持つペレットに加工することに成功。2018年にはついに、宮城県産の飼料用米で養殖された「みやぎサーモン」が初出荷され、「養殖臭がない」など高い評価を得ました。
農林中央金庫は、18年に仙台市内で開かれた発表会を積極的にバックアップ。さらに、「みやぎサーモン」の海外輸出の足がかりをつかむため、仙台支店とニューヨーク支店が連携して北米地域のバイヤーとマッチングを行うなど支援を続けてきました。また「餌を県産の飼料用米とするだけではなく、従来は県外が多かった加工についても、県内で手掛け“オールみやぎ”のブランドを確立したい」と意気込む山下さんらは、次なる商品展開として、宮城県産木材のチップで燻製したスモークサーモンの開発も進めています。農林中央金庫は、森林組合連合会の紹介などのサポートも積極的に進めています。
「みやぎサーモン」は、風土や伝統が育んだ特色ある地域産品を知的財産として保護するGI制度(地理的表示保護制度)に17年に登録されました。宮城県産品としても、養殖ものとしても初めてのことでした。今後は、県内で養殖するギンザケの全量に宮城県産飼料用米を使用することを目標に、世界規模でのブランド化を目指しています。
ビジネスマッチング事業
農林中央金庫は、系統組織の全国金融機関であることを活かし、ビジネスマッチング事業を推進しています。系統団体をはじめ、農林水産事業者や法人取引先が必要としている情報を収集。それぞれのニーズに基づき、国内外を問わない連携と新たな付加価値の創出を後押ししています。
(取材日:2019年5月)
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