現場の声 由比港漁業協同組合(静岡県)

由比港漁業協同組合(静岡県)

「資源管理型」サクラエビ漁で漁業の持続的発展と地域の活性化を ●農林水産業の持続的発展、成長産業化 ●農林水産業を通じた経済の発展 ●農山漁村地域の生活基盤の活性化 ●国土・海洋の環境変化

 今や全国的に貴重な食材として珍重されているサクラエビは、駿河湾の特産品です。その代表的な漁業基地が、静岡県中部の清水区由比にある由比漁港です。この由比漁港と、同県内の大井川とで全国のサクラエビ漁獲量の100% を占めています。

 サクラエビが水揚金額の約9割を占める由比港漁協では、水産資源の持続的利用のために多くの工夫を行ってきました。なかでも画期的なのが総プール制です。昭和50年代、漁業者同士の過当競争による資源減少を未然に防ぐため、全サクラエビ漁域の総水揚金額を、一定のルールに基づき各漁業者へ均等配分(プール配分)する制度を始めたのです。この過度な漁獲を防ぐスキームは、水産資源の保護や持続的な漁業の活性化につながり、そして漁業収入の安定が図られることで、若年層の人気も高く、後継者不足もありません。

 さらに由比港漁協では20 年ほど前から、『由比桜えび』のブランド化を推進してきました。かつては、若手漁業者自ら鮮度の高い生食用の由比産サクラエビを築地に持ち込むなどのPR を行い、『由比桜えび』の名を全国区に育てあげたのです。

  • 由比港のサクラエビのオブジェ

    お昼時になれば大行列ができる「浜のかきあげや」

  • サクラエビのかきあげと沖漬け丼

    日中停泊する漁船。漁は夜間に行われます

 くわえて由比港漁協は港自体の活性化にも貢献してきました。港にある食堂「浜のかきあげや」は、サクラエビ料理を提供する大人気の食堂で、漁協の大きな収入源です。開業当初は観光客の取り合いになると地元商店街からの反対もありましたが、「食堂に人が集まることで由比の人通りが増え、地域の繁盛店が増えました」と、漁協の海野剛裕参事は笑顔で語ります。ほかにも『由比桜えび祭り』はじめ、由比港漁協などが開催するイベントが地域の活性化につながっています。こうした一連の活動は他地域の漁協にも注目されていて、漁業従事者の横のつながりを生んでいます。

「富山県の新湊漁協は由比港漁協と連携し、白エビ漁について総プール制の手法を採用して魚価向上に繋げているそうです」(海野参事)

 このように資源管理型漁業に積極的に取り組む由比港漁協ですが、近年、漁獲量の減少傾向が課題となっています。そこで漁協では、継続的に産卵調査を実施するだけでなく、マリンエコラベル※を独自に取得するなど、『由比桜えび』のブランドをさらに高めることで、漁獲量が減少しても漁業者が安定した収入を得られるよう、さらに努力をかさねています。全国の漁業従事者の注目のなか、由比港漁協の資源管理型漁業への挑戦は続いていきます。

漁業新規就業支援事業

農林中央金庫では2016年度から3年間で総額5億円の範囲で助成金を拠出する「漁業新規就業支援事業」を行っています。家業を継承する漁業者の子弟を研修生として受け入れるための費用を助成するもので、新規就業者の増加と生産基盤の維持、漁業の成長産業化に貢献することを目指す取組みです。

(取材日:平成30年4月)

pagetop