農業への貢献~「新規就農応援事業」を活用した支援
JA岡山西では、3つの切り口――①後継者支援、②新規・定年就農者の育成、③集落営農組織への支援から地域の担い手育成、に取り組んでいます。なかでも新規就農者の育成については、国や県の助成制度、JAバンクの新規就農研修支援事業を活用しながら体制を強化し、管内における新規就農者は平成19年から平成27年までの累計で94名、特に直近5年間では54名に達します。福島県からの新規就農者であるモモ農家の永倉隆大(ながくら たかひろ)さんと、JA岡山西の吉備路アグリセンターの安井健(やすいけん)センター長にお話を伺いました。
福島県のモモ農家の跡取り息子が岡山県で就農
「岡山県を訪れたきっかけは、福島県でモモ・ブドウ・リンゴを生産する父親が、以前から『岡山県のモモの生産技術は優れている。ぜひ一度学びたい』と口にしていたからです。子どもの頃から農業の仕事を手伝っていたので、高校時代には自分自身も“果樹づくりの技術”に興味が湧いていました。
高校を卒業して、岡山県の農業大学に入学したのが平成22年。その翌年に東日本大震災が発生しました。福島の実家の被害は限定的でしたが、その後、福島県の農産物は厳しい風評被害にさらされました。当時、福島県に戻った時に、大量の新鮮なモモが廃棄されるのを見た時はショックでしたね。そんな厳しい状況でも頑張っている両親の姿を見て――まだ二人とも50代で元気ですが――逆に自分は岡山県で就農し、農業経営者として父と肩を並べられるようになろう、と決心しました。
JA岡山西の新規就農者募集で採用していただき、もともと父親が学びたいと話していた『岡山自然流』で栽培する総社もも生産組合の秋山陽太郎(あきやま ようたろう)組合長のもと、2年間の研修を受け、平成26年に独立しました。76アールの耕作地に12品種のモモの樹を植え、そのうちの1種類は福島産の品種にしました。」(永倉隆大(ながくら たかひろ)さん)
新規就農の成功のポイントは、地域の人とのつながり
「就農してからの毎日は、楽しくて仕方がないです。一からモモの木が育つ様子を見て『自分も少しは成長しているのかな』と感じたり、順調にいけば2年目の今年に初めて実がなるので、とにかく今はそれが一番の目標です。
JAを通じて就農したメリットは、家や土地の斡旋、設備投資資金や経営計画の策定など実務面のサポートだけでなく、“人とのつながり”をつくりやすくしてもらえたことが大きいですね。新規就農者や若い担い手も多く、相談もできるし刺激も受けます。」(永倉さん)
「当管内は肥沃な水田地帯であると同時に、マスカットが県下取扱数量の54%、モモが47%を占めるなど、県下有数の果樹地帯です。永倉君が就農した“吉備路ブロック”はモモやブドウ、稲作、麦、大豆、野菜など農産物の品種が多様です。また、『農業後継者クラブ』という組織があり、異なる作目の農業者同士が密接に交流していますし、私も含めてJA職員も普段から連携に努めています。
農業の仕事は、一人で生産技術を研究して極めるというものではありません。同じ品種でも、土地や環境によって生産技術は大きく変わります。多くの人から経験談を聞き、得た知識を自分の圃場に合うよう応用する。その繰り返しです。新規就農者が地元の人とのつながりやネットワークを広げてもらえる環境の整備を常に心掛けています。」(吉備路アグリセンター 安井健センター長)
地域の担い手になる人材を育てる
「研修中には、果樹栽培の閑散期にJAのライスセンター等で働かせていただき、おかげで農業者以外の農業関係者との人脈も広がりましたね。今はとにかく早く一人前になって、お世話になった方々に恩返しがしたいです。」(永倉さん)
「モモやブドウなど、管内の新規就農者から地元の生産組合等のリーダーも生まれています。果樹栽培など高い生産技術を必要とする農業では、技術を受け継ぐ担い手の育成が不可欠です。しかし、単に就農者を増やすのが目的ではなく、地域を担う人材を育成し、農業振興に貢献することがJAの役割です。管内では、やる気のある若い担い手たちが多く、SNSで生産組合の情報を全国に発信したり、JAと連携して首都圏への出荷や輸出など新たなチャレンジにも取り組んでいます。当管内に興味がある方は、是非一度足を運んでください。」(安井センター長)
(取材日:平成28年5月)
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