水産業への貢献
年間水揚げ量が20万トンを超える日本有数の水産物供給拠点、銚子漁港。黒潮(暖流)と親潮(寒流)が交じり合う恵まれた漁場から獲れる豊富な魚種のなかでも、近年、銚子のキンメダイ「銚子つりきんめ」は、千葉ブランド水産物認定品として高い評価を受けています。魚の付加価値を高めるべく、漁業者とJF銚子が一体となって取り組んだ約20年間のブランド化への歩みについて伺いました。
自らが動いて、自分たちの漁場を守り、魚の付加価値を高める
「資源管理のスタートは、昭和の終わりから平成にかけて県外の大型トロール船に対して、底曳き網漁業の自粛要請を行ったことがきっかけでした。相手に求めるだけでなく自分たちも資源保護に取り組むべきだと考えて、平成9年には『キンメダイ・アカムツ研究会』として、針数の制限、一定サイズ以下の再放流、休漁日の設定などの操業規制を定めました。
しかし、海の資源管理は、漁業者にとっては収入の減少につながる水揚げの制限が大前提です。そのため、魚の付加価値を高めるPR活動を先駆けて始めたわけです。JF銚子の大塚さん(当時は銚子市外川漁協に所属)に協力してもらいながら、平成7年に第1回『きんめだいまつり』を地元の外川漁港市場で開催しました。」(金野一男(かねの かずお)組合理事/キンメダイ・アカムツ研究会会長)
「金野会長から相談されたものの、我々もイベント開催は素人です。初回の『きんめだいまつり』では、地域の学校からテントをお借りし、チラシも私がワープロで作りました。銚子のキンメダイを知っていただこうと、当初はキンメダイを来場者に無料で提供してたんですよ。来場者数も第1回の1,500人から、平成11年に開催場所を銚子マリーナに変更したあたりから10,000人を超え、マスコミの注目も集まるようになり、徐々に“銚子のキンメダイ=高級魚”という評価が定着しました。平成18年には『千葉ブランド水産物』の第1号に認定され、平成21年に『銚子つりきんめ』を商標登録しました。
もちろんJFも協力してきましたが、PR費用についても研究会で積み立てて、漁業者自身がイベント会場に足を運んで消費者と対話をするなど努力を重ねてきたことが、結果に結び付いたと思います。」(大塚憲一(おおつか けんいち)常務理事)
ブランド化の目的は、安定した漁業経営を実現すること
「資源管理については、平成18年に1本の縄から多数漁獲する延縄(はえなわ)漁業を禁止して一本釣りの立縄(たてなわ)漁業に一本化したり、休漁期間を拡大するなど強化を続けてきました。」(金野会長)
決して簡単な決断ではなかったですよ。当時は、延縄漁業で1日50~70万円を確実に稼ぐことができたのに、それを明日からやめるわけですから。PRイベントなどの開催で結果を出してきたからこそ、みんなが金野会長のリーダーシップに賛同したのだと思います。」(山口廣志(やまぐち ひろし)組合理事)
「現在も延縄漁業を続けていたら、銚子沖のキンメダイを獲り尽くしていたかもしれません。ブランド化の成功で、銚子ではキンメダイを扱う若い漁業者が増えていますが、過去に資源管理を決断したからこそ、今の担い手たちに資源を残すことができました。」(加瀬博之(かせ ひろゆき)組合理事)
「魚の付加価値が高まれば、単価が安定する。将来の収入の見通しがつけば、船などの設備投資も計画的に行うことができる。きちんと休みも取りながら、安定した漁業経営を行うことができる。それが資源管理やブランド化の目的だと言い続けてきましたし、みんなもよく理解してくれたということだと思います。」(金野会長)
次世代のために銚子の浜を守る
「一定の成果は出ましたが、まだ、次の世代のためにやることがあります。ブランド化については、銚子は成田空港に近いという地の利を活かして、国内だけでなく海外のみなさんにもPRを広げていければ、さらに地域の活性化にも貢献できます。
また、資源管理については、今後もしっかりと取り組まなければなりません。若い後継者にとって何よりも基盤となるのは、豊かな海の資源なのですから。」(金野会長) ひろし)組合理事)
「漁業者のみなさんは、これまでも日本各地の研究施設などを回り、キンメダイの孵化について可能性を検討されるなど、海の資源を守るため、常に努力されています。昨年からは、みなさんからの要望を受けて、震災後に銚子の海に変化が起きていないか、長期的な視点での海底調査を始めました。」(大塚常務理事)
「資源管理にしてもPR活動にしても、ブランド化の確立は漁業者だけではできなかったです。JFの職員が自分たちの思いを理解して、漁業を守っていきましょうと、同じ気持ちで一緒に活動してくれたから成功したんですよ。一つのチームとして活動できたのは、協同組合ならではのことだと思います。これからの世代も、チームワークで銚子の浜を守っていってくれればと思います。」(金野会長)
(取材日:平成28年3月)
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