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英国の洋上風力発電事業への投資。収益還元と環境課題解決を両立するプロジェクトファイナンス

2026年10月28日

ポイント要約

どんな事例?

  • イングランド東部のサフォーク沖に建設された大規模な洋上風力発電プロジェクト「East Anglia ONE」に対するプロジェクトファイナンス※1

背景・課題

  • 当金庫は国際分散投資によって会員に安定的な収益を還元していくうえで、様々なアセットクラス※2への投資を通じたポートフォリオ※3の分散化を模索 
  • 当金庫は重要課題の一つに「脱炭素社会の実現」を掲げ、農林水産業の基盤にある地球環境の課題解決に繋がるサステナブル・ファイナンス※4にも注力

取組み・農林中央金庫の関わり

  • 「East Anglia ONE」における洋上風力発電事業に対するプロジェクトファイナンスとして本件が組成され、当金庫はシンジケート団の一員として資金実行を行った 
  • 資金実行にあたって様々なリスク分析を重ねたことで、洋上風力発電事業をはじめとした再生可能エネルギープロジェクトへのファイナンスにかかるノウハウ蓄積に繋げた

成果

  • 102基の風力タービンが完全稼働し、年間で約70万世帯の電力を賄うクリーンエネルギーを産出
  • 当金庫として安定した収益を確保すると同時に、環境課題の解決にも繋がる取組みとなった  

※2026年7月時点の取組事例です 

プロジェクトファイナンスの成功事例となった洋上風力発電プロジェクト 

投資ビジネスにおいて、当金庫は会員からお預かりした資金を安定的に運用し、収益還元に繋げるため、国際分散投資をコンセプトに国内外の様々な資産に投資を行っています。具体的には、伝統的な資産である株式や債券だけではなく、長期的に安定した収益を見込めるプロジェクトファイナンスなど、その投資対象を拡大させてきました。さらに近年では、再生可能エネルギーなど、持続可能な未来をつくる事業を対象とする「サステナブル・ファイナンス」にも注力しています。 

プロジェクトファイナンスの代表的な事例は、イングランド東部のサフォーク沖43kmに建設された、総事業費約25億ポンドの大規模な洋上風力発電プロジェクト「East Anglia ONE」に対するファイナンスです。本プロジェクトに対して、当金庫はシンジケート団の一員として資金を実行しました。

当時、当金庫のプロジェクトファイナンス部(現 クレジット投融資部)に在籍していた林雅之が、本プロジェクトを担当しました。「本件にはマルチコントラクターという形で多くの建設業者が参画し、インターフェースリスク※5を負いながら開発していました。そこで各事業者がどのような役割を負い、どのような技術で開発を進めているのか、一つひとつ細かく丁寧に確認することに相当な時間を要しました」と、資金実行までのプロセスを振り返ります。

収益還元と環境・社会課題の解決を両立させることに挑戦 

細部にわたるリスク分析を経て資金実行された本プロジェクトは、2020年に商業運転を開始しました。現在では102基の風力タービンがフル稼働しており、年間で約70万世帯の電力を賄うのに十分なクリーンエネルギーを生み出しています。当金庫のファイナンスが、環境課題に対するポジティブなインパクト創出に結びつきました。

また本プロジェクトは、英国政府が低炭素発電事業の売電収入を補助するCfD(差額決済)制度の第1回入札案件として選定されています。事業者は15年間にわたって実質的に固定価格で電力を販売できるため、安定した事業基盤を有しています。

林は、本件の成果を“安定した収益”と“環境課題の解決”という二つの側面から語ります。「まず、投資実行後、プロジェクトがおおむね計画どおりに推移し、リスクを抑えながらリターンを得るという当初の狙いを実現できているという点で、大きな成果を得られたと考えています。また、本件で対応した洋上風力発電所でも安定した発電が継続されており、再生可能エネルギーの発展、ひいては環境課題の解決に向けて一定の寄与ができたのではないかと考えています」

本プロジェクトにおいて蓄積されたリスク分析のノウハウは、その後の国内外の再生可能エネルギープロジェクトの分析においても活用され、当金庫のサステナブル・ファイナンスを推進する土台となりました。脱炭素社会の実現は、当金庫がパーパス※6実現のために定めた重要課題の一つ。地球環境の課題解決に貢献することは、日本の農林水産業を守る意味でも重要であり、当金庫は2021年度から2030年度までの累計で、15兆円のサステナブル・ファイナンス新規実行を目指すという数値目標を掲げています。当金庫は今後も、国内外の拠点ネットワークを最大限に活用し、会員への安定的な収益還元と、持続可能な社会の実現を両立させる投資ビジネスに挑戦し続けてまいります。

農林中央金庫 審査部 林 雅之

担当 VOICE

サステナブルな環境の実現に
ファイナンスを通じて貢献したい

農林中央金庫
審査部 ※7

林 雅之

当金庫が投資ビジネスにおいて掲げている「国際分散投資」の根底には、JAやJFをはじめとする系統組織のみなさまからお預かりした大切な資金を運用しているという強い責任感があります。リスクを抑えながら十分な収益を確保し、みなさまに還元するためには、投資対象を適切に分散させる必要があります。その点で、各参加者がコントロール可能なリスクを的確に分担していくというプロジェクトファイナンスのコンセプトは、当金庫の安定的なポートフォリオ運営にマッチしていると考えています。

「East Anglia ONE」への投資にあたっては、当時担当をしていた私たちのチームが情報収集を行い、組織内の審査部門から様々な意見や助言を受けながら、リスクとリターンが見合っているのか、深く議論を重ねました。新しい技術や複数の事業者が絡むインターフェースリスクをどう評価するか、一つひとつ丁寧に分析する作業は困難もありましたが、この経験は私にとって大きな価値がありました。私自身、現在は審査部という立場に変わりましたが、当時の経験を後進のメンバーにしっかりと伝え、組織全体の向上に繋げていきたいと考えています。

サステナブル・ファイナンスの領域は、CCS(二酸化炭素の貯留プロジェクト)や、BESS(大型蓄電システム)など、新しい技術や事業モデルが矢継ぎ早に投入される変化の激しい分野であり、適切にリスクを評価できなければ資金対応はできません。加えて、この分野は各国政府やプロジェクトに参加する各企業のコミットメントが非常に強く、熱量の高い領域であることも特徴です。

そうした熱量を受け止め、サステナブルな環境を実現するために資金面のボトルネックを解消する手助けができることは、非常に意義深い仕事だと感じています。特に今回のプロジェクトは、事業主体が次の開発へ進むための資金調達でもあったため、私たちの投資が次世代のクリーンエネルギーの元手になっているという確かな実感があります。

農林水産業に関わるみなさまからお預かりした資金だからこそ、いかに有意義に活用し、社会や環境に貢献できるか――これは当金庫の全役職員が考えていることだと思います。現在、当金庫は現地法人を含め、ロンドン、アムステルダム、シドニー、ニューヨークにプロジェクトファイナンスのチームを有し、世界の最前線で情報収集に努めながら、新たな投資対象を模索し続けています。これからも組織内外の関係者と連携を深め、過去に培ったリスク分析のノウハウを活かしながら、環境・社会課題の解決と収益確保を両立させる、当金庫ならではの投資ビジネスを推進してまいります。

  • ※ 1…プロジェクトファイナンス:特定の事業(プロジェクト)から生み出されるキャッシュフローを返済原資とする資金調達手法。
  • ※ 2…アセットクラス:投資対象のアセット(資産)の分類のこと。値動きの異なる多様なアセットに分散投資することで、価格変動リスクを抑制できるとされる。
  • ※ 3…ポートフォリオ:投資資産の配分や比率のこと。
  • ※ 4…サステナブル・ファイナンス:環境・社会課題の解決に貢献する事業への投融資のこと。
  • ※ 5…インターフェースリスク:複数の事業者が関わるプロジェクトにおいて、各事業者の業務の境界(インターフェイス)で生じる責任範囲の不明確さや調整不足によるリスク。
  • ※ 6…当金庫は「持てるすべてを「いのち」に向けて。~ステークホルダーのみなさまとともに、農林水産業をはぐくみ、豊かな食とくらしの未来をつくり、持続可能な地球環境に貢献していきます~」というパーパスを定めています。
  • ※ 7…本件担当当時はプロジェクトファイナンス部(現 クレジット投融資部)に在籍

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