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環境保全を未来に繋ぐ。久米島の海を守る新たな地域連携モデル

2026年10月28日

ポイント要約

どんな事例?

  • 沖縄県久米島における、モズク養殖を通じた漁場環境保全活動と、そのCO₂吸収効果による「Jブルークレジット※1」の認証取得事例

背景・課題

  • 海水温上昇等の海洋環境の変化でモズクの生育の土台となる海草が減少し、モズクの水揚量が減少
  • モズクは産地による差別化が難しく、久米島産モズクのブランド化に悩んでいた

取組み・農林中央金庫の関わり

  • 久米島漁業協同組合(以下、久米島漁協)の漁業者たちが、食害魚の捕獲やサンゴ礁保全、防護ネットの設置等の漁場環境保全活動を開始
  • 当金庫は、九州信用漁業協同組合連合会(以下、九州信漁連)と連携し、保全活動に対する助成金の提案や、養殖モズクの付加価値向上に向けた伴走支援を行った
  • Jブルークレジットの認証取得に向けた情報収集・提供および各種手続きや関係者への理解促進活動をサポート

成果

  • 2025年12月に1.5t-CO₂のJブルークレジット認証を取得
  • クレジットは県内企業3社に販売され、その販売代金が再び漁場環境保全活動に還元される地域連携モデルを実現

※2026年7月時点の取組事例です 

モズク漁の危機にチームで立ち向かう。現場のネットワークが生んだ伴走支援 

モズクの産地として知られる沖縄県久米島では近年、海洋環境の変化が問題となっています。海水温上昇等の影響により、モズク生育の土台となる海草(アマモ類等)が減少。海草を食べていた魚や海ガメが餌を求めて養殖モズクを食べるという食害が発生し、2018年を境にモズクの水揚量が大きく減少する事態となりました。

藻場の再生に向けて
藻場の再生に向けて

こうした状況に対し、久米島漁協の漁業者たちは食害魚の捕獲や、モズクを魚から守るための防護ネットの設置、海草の種苗育成といった藻場の保全活動を開始しました。その地道な努力を後方から支えたのが九州信漁連と当金庫です。2024年8月、九州信漁連は沖縄県内でモズク養殖に取り組む漁協関係者を集めて意見交換を行い、漁場環境保全活動に活用できる当金庫の助成金や、モズクの付加価値向上に向けたサポートを提案。九州信漁連 沖縄統括支店の浦崎政伸常務理事は「農林中央金庫には環境保全活動を支援するための助成等の枠組みがすでにありましたから、私たちが中心になって、そういった課題を持つ漁協さんに話を聞いていきました」と当時の対応を振り返ります。 

漁場環境保全活動においては、当金庫が支援のプロジェクトを設計し、九州信漁連が助成金の申請事務手続きを代行するなど、当金庫と九州信漁連が連携して伴走支援を実施しました。浦崎常務理事は「漁業者や漁協の職員のみなさんはお忙しいですから。私たちが申請手続き等を一緒に行い、少しでもお手伝いできればと考えました」と語ります。久米島漁協の田端裕二組合長は「九州信漁連や農林中央金庫のサポートのおかげで保全活動を前に進めることができ、助かりました」と、本取組みの協力体制について語っています。 

環境保全を未来への価値へ。海を守り、地域産業を強化する新たな連携モデル 

漁場環境の保全活動をより持続可能なものにするため、当金庫と九州信漁連が提案したのが、「Jブルークレジット」の認証を取得することでした。これは海洋生態系が吸収・固定する炭素(ブルーカーボン)※2の仕組みを活用し、本取組みを通じて豊かに育ったモズクが吸収したCO₂の量をカーボンクレジットとして認証し、その環境価値を売買できる制度です。 

Jブルークレジット認証に向けた資料集めや関係者との調整作業、さらに地域の方々への理解促進活動等も、当金庫と九州信漁連が協力して推進しました。「本プロジェクトは地域一体の活動として推進する必要がありました。そのために農林中央金庫とともに久米島に出向き、地域のみなさまや漁協関係者にブルーカーボンとは何かを伝える、理解促進活動も進めました」(浦崎常務理事)。そして2025年12月、久米島海域で養殖されているモズク(44ha、約1,500t)を対象とする、1.5t-CO₂のJブルークレジット認証を取得することができました。

創出されたJブルークレジットは、本プロジェクトに賛同した沖縄セルラー電話株式会社、株式会社久米島の久米仙、米島酒造株式会社の県内企業3社が購入し、カーボンオフセット※3に活用される予定です。また、Jブルークレジットの購入代金(販売代金)は久米島の漁場環境保全活動へ還元されます。こうした仕組みは、海洋保全と地域産業の発展を両立させる地域連携モデルとして期待されています。

久米島漁協ではJブルークレジットに加えて、持続可能な漁業・養殖と環境配慮を満たした水産物を認証する、マリンエコラベル(MEL)認証※4も取得。田端組合長は「久米島産のモズクを購入すると代金の一部は環境保全に使われるなど、付加価値をつけて販売拡大に繋げていければ」と今後の展望を語ります。当金庫としても、引き続き九州信漁連と連携して久米島産モズクのブランド化や、デジタル技術を用いたNFT※5商品の展開など、新たな展開をサポートし、さらに本プロジェクトのような地域連携モデルの深化を通じて、地域経済の活性化と、日本の持続可能な水産業の発展に取り組んでまいります。

農林中央金庫 那覇支店 堀本 恭平

担当 VOICE

久米島の成功事例を、日本の水産業のサステナブルな発展に繋げたい

農林中央金庫
那覇支店

堀本 恭平

久米島におけるJブルークレジットの認証取得は、当金庫および九州信漁連にとっても初めての挑戦であり、まさにゼロから1を生み出す、非常に大変なプロジェクトでした。久米島だけでなく、沖縄全域で漁場環境が悪化しているという話は認識していました。その点では、日頃から漁協のみなさまの声を拾い上げている九州信漁連と連携し、現場の声を直接聞くことが重要でした。信漁連のご担当者とともに現場にお邪魔してお話を伺いながら、当金庫として何ができるかを模索していました。

これまで、漁業者のみなさまが取り組む環境保全や漁場保全の活動は、直接的な経済価値に結びつきにくいという課題がありました。しかし本プロジェクトでは、Jブルークレジットという仕組みを活用することで、地道な取組みが経済的価値に変換されます。さらに、久米島に拠点を持つ酒造メーカーや、沖縄の環境保全に意欲を持つ県内企業にJブルークレジットをご購入いただくことで、企業にとっても環境を守っているというPRになり、その代金が再び保全活動に活用されるという好循環が生まれました。漁業者、地域、企業が連携しながら海の環境を守る体制を構築できたことは、本プロジェクトにおける大きな意義だと考えています。

また本プロジェクトを通じて、当金庫が単なる資金対応にとどまらず、今回のように非金融面でも系統組織のみなさまと連携しながら、支援を提供していくことが求められていると感じています。現場で汗を流すみなさまの取組みをサポートしながら、持続可能な産業の仕組みを作っていくことは私たちならではの重要な役割です。

今後の目標は、この久米島のような事例を県内の他地域や、当金庫の全国ネットワークを活かして県外にも展開することです。地域と日本全国を繋ぐような取組みを通じて、日本全体の農林水産業のサステナブルな発展に貢献したいと思います。さらに、成長著しい東南アジア等にも目を向け、海外に向けた新たな販路開拓にもチャレンジしていけたらと考えています。

  • ※ 1…Jブルークレジット:一般社団法人ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が運営する、海草・海藻等が吸収するCO₂量を科学的に算定し、認証・発行するカーボンクレジット。
  • ※ 2…ブルーカーボン:海洋生態系が吸収・固定する炭素のこと。
  • ※ 3…カーボンオフセット:企業等が自らの活動によって排出する温室効果ガス(GHG)の削減を目指す際、削減が難しい部分を他者の削減活動への投資等、別の方法で埋め合わせ(オフセット)すること。
  • ※ 4…マリンエコラベル(MEL)認証:持続可能な漁業・養殖と環境配慮を満たした水産物を認証する日本発の水産エコラベル。
  • ※ 5…NFT:非代替性トークンのことを指し、ブロックチェーン技術を用いてデジタル上で唯一性や所有証明を付与できるデジタル資産。

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