気候変動(TCFD提言に基づく開示) ーハイライトー

ガバナンス

  • 気候変動を含む環境・社会課題にかかる各種取組みは理事会傘下のサステナブル協議会で定期的に協議しているほか、環境・社会リスク管理に関する事項については同じく理事会傘下の統合リスク管理会議で協議。協議内容は必要に応じて理事会、および経営管理委員会に付議・報告。
  • 気候変動を含む環境・社会課題解決に向け取組みの推進を行うサステナビリティ統括責任者として、CO-CSuO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)を配置。さらに、理事会の諮問機関としてサステナビリティ・アドバイザリー・ボードを設置し、外部意見を当金庫サステナブル経営に反映。
  • 役員報酬のうち理事の変動報酬については、当金庫の持続可能な成長に向けた健全なインセンティブとして、経営計画において地球環境への貢献を含むサステナブル経営の高度化、農林水産業・地域への貢献、会員の経営基盤強化のほか、職員エンゲージメントに資する目標等を設定し、その達否に基づき支給。

戦略

  • 2023年3月に2050年ネットゼロへのコミットメントを発表。本コミットメントの一環として、2050年までに投融資ポートフォリオを通じた温室効果ガス排出量ネットゼロを目指す銀行間の国際的なイニシアティブである「Net-Zero Banking Alliance(NZBA)」に加盟。「ネットゼロに向けた移行計画」において、2030年度中間目標を設定。
  • 気候変動は将来起きるリスクであると同時に、その緩和と適応に向けた対応はビジネス機会でもあることを認識のうえ、ステークホルダーとの対話や脱炭素に向けたソリューション提供を推進。
  • 気候変動に伴うリスクについて、統合的リスク管理の枠組みのもと、シナリオ分析等を通じたリスク評価と適切な管理を実施。
    • 移行リスク:気候変動の緩和と適応への取組み進展に伴う政策、法規制、技術、市場などの変化の影響を受ける投融資先の信用リスクや座礁資産化リスク。
    • 物理的リスク:気候変動に伴う自然災害や異常気象による当金庫および投融資先の資産に対する物理的な被害を通じて財務毀損が増大するリスク

当金庫で認識する気候変動リスク

リスク 細分類 主なリスク 時間軸
移行リスク 政策法務技術市場
  • 2℃目標達成に向けた規制対応が投融資先のビジネスモデルや業績に影響を及ぼすことによる与信コストの増加
  • 市場が脱炭素化を志向することで商品・サービスの需給関係、企業業績が変化することによる与信コストの増加
中・長期
政策
  • 国際的な気候変動への対応強化要請の高まりを踏まえた規制変更
短期
評判
  • 気候変動に対する取組みや情報開示が不十分とされるリスク
短期
物理的リスク 急性慢性
  • 台風・豪雨等の自然災害に伴う投融資先の事業停滞による業績悪化や、不動産等の担保価値の毀損を通じた与信コストの増加
  • 気候変動が土地利用、第一次産業の生産性等に影響を及ぼすリスク
  • 異常気象による当金庫資産の損傷に伴う事業継続への影響
短・中・長期

移行リスク分析

  • セクター別・地域別のリスク評価に基づき、リスクが高いと判断された「電力」「石油・ガス・石炭」「化学」セクターのほか、食農バリューチェーンを構築する「食品・農業」「飲料」セクターについてシナリオ分析を行い、脱炭素化の進行による与信コストの中長期的な変化を分析(分析対象は国内外の融資先と社債投資先)。
  • シナリオについては、気候変動リスクに係る金融当局けネットワーク(以下「NGFS」)の公表するNet Zero2050シナリオ等に加えて、代表的な国際エネルギー機関(IEA)、国際連合食糧農業機関(FAO)が公表するシナリオ等を使用。
  • 分析の結果、与信ポートフォリオに与える影響については限定的と評価。

物理的リスク分析

  • セクター別・地域別のリスク評価に基づき、リスクが高い地域と判断した「日本」について、物理的リスクの急性リスクと慢性リスクについてシナリオ分析を実施。
  • 急性リスクについては、近年大きな被害が発生している洪水被害の分析を実施し、国内融資先の国内重要拠点に与える影響に加えて、当金庫が差入れを受けている不動産担保への影響を分析。分析の結果、与信ポートフォリオに与える影響については限定的と評価。
  • 慢性リスクについては、農林水産業を基盤とする当金庫にとって重要な農業セクターへの影響分析を実施。分析対象品目は、稲作、畜産(生乳、肉牛)を選定し、気温上昇を含む気候変動が生産者収入に与える影響と適応策について分析。本分析は生産者の収入への影響分析であり、当金庫の財務への影響分析にあたっては、多様かつ複雑な影響経路があるなかで、蓋然性の高い経路の特定等を進める必要があり、分析モデルの構築には更なる検討が必要と認識。

リスク管理

  • 気候変動を含む環境・社会にかかるリスク管理の枠組みを導入。環境・社会課題解決に向けた基本方針である環境方針・人権方針のもと、気候変動を含む環境・社会への負の影響が懸念されるセクターについて、投融資における環境・社会配慮の取組み方針を策定。また、大規模な開発プロジェクト案件については、赤道原則に基づくリスク管理を実施。
  • リスクアペタイトフレームワーク(規律あるリスクテイクと、リスク・リターンの最適化につなげる経営管理の枠組み)に基づき、経営環境やリスク認識を踏まえたトップリスク(今後、特に留意すきリスク事象)を選定し、想定する将来シナリオの分析を実施。
  • トップリスクとして「気候変動・生物多様性などサステナビリティ関連課題への対応」を選定。気候変動による脱炭素経済への移行に伴う金庫ポートフォリオの座礁資産化や風水害等、自然資本・生物多様性の劣化は、当金庫やその基盤である農林水産業や地域の持続可能性にも甚大な影響を及ぼす可能性がある重要なリスクと認識。トップリスク選定を通じて、当該リスク認識に対する組織内での目線を揃え、リスク管理体制の高度化を推進。

指標と目標

区分 指標 直近実績 目標
投融資先等のGHG排出量削減 投融資ポートフォリオのGHG排出量 2050年ネットゼロに向けた2030年度中間目標
【融資】 電力セクター
基準年:2019年度実績
213gCO₂e/kWh
2020年度
217gCO₂e/kWh
138~165gCO₂e/kWh
【投資】 投資一単位あたりの排出量(株式・社債)
基準年:2019年度実績
0.66tCO₂e/百万円
2020年度
0.55tCO₂e/百万円
2019年度比▲17%
2019年度比▲49%
会員と一体となった森林由来CO₂吸収 2021年度
612万tCO₂
2030年度時点で900万tCO₂/年
農林中央金庫拠点のGHG排出量 2021年度
19,849tCO₂
2030年度までにネットゼロ
サステナブルビジネスの推進 サステナブル・ファイナンス新規実行額 2021年度~2022年度(累計)
4.4兆円
2030年度までに10兆円
リスク管理態勢の強化 石炭火力発電向け投融資残高の削減 2022年度末
366億円
2040年までにゼロ

※2019年度対比での上昇は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴うエクスポージャー拡大に加えて、システム登録整備により電力セクターに分類した取引先数の増加によるもの。

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