ポイント要約
どんな事例?
- 米国向けの新商品としてアジアンヌードルを企画していた日系食品メーカーに対して、当金庫が販路開拓をサポートした事例
背景・課題
- 米国市場は日本と商習慣が異なり、専門的な知識や現地でのネットワークがないと商流構築が難しい
- 日本と米国では、消費者の好みや食品添加物のレギュレーションなどが異なるため、米国市場に展開する場合には工夫が必要
取組み・農林中央金庫の関わり
- 当金庫のネットワークを活かし、米国食品業界において実績を持つコンサルファーム「JPG Resources」を日系メーカーに紹介
- 日米間の文化的なギャップを埋める橋渡し役として両者のコミュニケーションをサポートし、商品開発を伴走支援した
成果
- 米国のトレンドを反映したアジアンヌードル新商品の開発が実現
- 米系メインストリーム市場※1での新商品販売に向けた準備が進んでいる
※2026年7月時点の取組事例です
ニューヨーク支店のネットワークを活かし、日系企業の米国進出を支援
当金庫は、食農バリューチェーン、すなわち農林水産業の生産現場から加工・流通・小売・外食、そして輸出に至るまで、食と農に関わる幅広い事業者とのネットワークを有しています。こうした「食農バリューチェーン」全体へアクセスできるという強みをもとに、国内外の拠点網も活かしながら、融資や出資などの金融サービスに加え、コンサルティングをはじめとした多様な非金融ソリューションを提供しています。その一つが、日本の食品関連企業の海外進出支援です。
米国では政府の健康政策MAHA※2やライフスタイルの変化によって健康志向が高まり、日本の食品に対する需要が拡大。これに伴い、日本の食品関連企業において、新たな成長市場として米国に進出する動きが目立っています。当金庫営業企画部の矢島寛貴は「日系企業から『米国進出を支援してほしい』というご相談を受ける数は、ここ数年で非常に増えてきました」と実感を語ります。
米国市場は日本と商習慣が大きく異なります。当金庫ニューヨーク支店の小林研太郎は、「米国ではWhat you know(何を知っているか)よりもWho you know(誰を知っているか)が重要です」と指摘します。米国の市場に商品を流通させるためには、ディストリビューター(物流業者)や現地のブローカーとのネットワークが不可欠であり、新規参入を試みる日系企業が商流を構築することは簡単ではありません。さらに、米国では保存料などを避ける「クリーンラベル※3」のトレンドも広がっており、日本の商品がそのまま流通できるとは限りません。
日系企業が直面するこれらの課題を解決するため、当金庫のニューヨーク支店では数年前から地道な活動を続けてきました。現地のディストリビューターやブローカー、食品関連企業、専門家との独自のネットワークを構築。本店が日系企業の米国進出に関する相談を受け、ニューヨーク支店の職員と連携して課題に応じたソリューションを設計し、実行する体制を整えてきました。
こうした米国進出の支援が成功した実例の一つとして、アジアンヌードルの新商品開発が挙げられます。ある日系食品メーカーが米国向けの新商品を検討していたものの、米国市場での需要やトレンドが十分につかめず企画が難航。これに対し、当金庫はマーケティングや商品開発に強みを持つ米国のコンサルティングファーム「JPG Resources」(以下、JPG社)をパートナーとして紹介し、新商品の開発実現までサポートしました。こうした支援について、小林は「構築してきたネットワークのなかから、適切な専門家やパートナーとなりうる事業者を考え、米国進出を目指す日系企業それぞれの課題に合ったソリューションを提供しています」と語ります。
黒子として日本の食を支える。米系メインストリーム市場への展開
日系企業が米国市場で成功するために必要な対応について、JPG社は「日本のブランドが持つ真正性や伝統的なストーリーを維持しながら、米国のレギュレーションや消費者の好みに合わせて商品を最適化すること」と指摘しています。JPG社は米国に幅広い業界ネットワークを持ち、専門家によるチームを構成して商品評価やフィードバックを行い、商品開発を支援しました。
このプロセスにおいて、当金庫は日米間の意思決定のスピード感や企業文化の違いによる障壁を取り除くため、きめ細かな調整と通訳の役割を担いました。JPG社は当金庫の役割について「日米間の文化的なギャップを埋める橋渡し役として、信頼関係を構築するための大きな助けになった」と評価しています。アジアンヌードルの新商品は米国の最新トレンドを反映した形で開発が進み、米系メインストリーム市場での販売実現に向けて着実に前進しています。
当金庫は金融面での資金対応にとどまらず、このような日系企業にフィットするパートナーの紹介や、米国での商流構築や戦略策定、セールスの支援など、非金融領域にまで踏み込んだ事業展開支援に注力しています。アジアンヌードルの事例だけでなく、全くの新規参入であったスナック菓子メーカーの米系メインストリームでの商品展開や、日本産和牛の高級食材としての流通・販売実現など、様々なプロジェクトで日系企業の米国進出を後押ししています。その数は、取組みを本格的に開始した2024年から2026年7月末までで7件に上ります。
JPG社は日本の食品について「米国で非常に高い評価を受けており、日本食品に対する需要は今後も拡大が続く」と評価しています。こうした需要拡大の機運を活かして日本の食の魅力と価値を世界に広げることは、国内農林水産業の持続可能な発展に繋がります。当金庫はこれからも、国内外に広がる拠点ネットワークを最大限に活かし、日本の農林水産業を支え続けてまいります。
担当 VOICE
日本企業の米国展開をサポートすることも
食と農を発展させるための貢献の一つ
農林中央金庫
営業企画部
矢島 寛貴
私は本店において、米国をはじめとする海外への進出を検討されている日系企業からのご相談をお受けし、現地での商流構築やビジネス展開の支援を企画・サポートする役割を担っています。具体的な現地のネットワーク構築はニューヨーク支店のメンバーが推進しており、本店は「日系企業がどのような考えを持ち、どのような層をターゲットに米国進出を目指しているのか」というニーズを正確に把握し、ニューヨーク支店と連携して最適なパートナーへと繋ぐ役割を果たしています。
当金庫は、JAやJFをはじめとする系統組織と、食農バリューチェーンにおける取引先との強固なリレーション、そして国内外の拠点やグループ会社を通じた幅広いネットワークを持っています。この確固たる基盤があるからこそ、単なる資金提供にとどまらず、本件のような非金融領域のソリューションを総合的に提案することができる――そこに当金庫ならではの独自性があり、強みがあると考えています。
私自身、身内が農家という環境で育ったこともあり、「日本の食と農に貢献したい」という思いを抱いて入庫しました。形は様々ですが、日本の素晴らしい食品を米国で広く流通させるためのサポートを行うことも、日本の食と農を発展させるための貢献の一つだと考えています。これからも日系企業の海外展開という挑戦に伴走し、日本の農林水産業を支えるお手伝いができればと考えています。
担当 VOICE
海外ネットワークを最大限に活かし
日本の食の魅力を世界へと広げる
農林中央金庫 ニューヨーク支店
(左から)
小林 研太郎
齊藤 達也
平岡 良規
ニューヨーク支店では、日系企業の円滑な米国市場への進出をサポートできるよう、現地でのネットワーク開拓や商流構築に向けた支援を行っています。米国市場は日本と商習慣が大きく異なり、人的な繋がりや信頼関係が重視されます。そのため、私たちは日頃から現地のアジア系のみならず、米系メインストリーム市場のクローズドなコミュニティにも深く入り込み、米国でのビジネスを検討する日系企業に適切なパートナーを紹介できるよう、地道な準備を重ねています。
近年、米国では健康志向が高まっており、現地のバイヤーや専門家と対話するなかで、日本の食品の品質が高く評価されていることを実感しています。一方で、原材料のレギュレーションの違いや、現地の嗜好に合わせた商品開発、流通チャネルの獲得など、越えるべきハードルも少なくありません。
私たちは、日系企業の課題に応じて適切な専門家を組み合わせ、商品開発から現地での販売までを支援しています。また、日系企業と現地のパートナーが相互理解を深められるように伴走することも重要な役割です。
日本の優れた食材や食品が、グローバルな市場で正当に評価されるように後押しすることが私たちの使命です。これからも現地で研鑽を重ね、海外ネットワークを最大限に活かしながら、日本の食の魅力を世界へと広げ、日本の農林水産業の持続的な成長を支えていきたいと思います。
- ※ 1…米系メインストリーム市場:アジア系スーパーなどのニッチな市場ではなく、大手スーパーマーケットをはじめ、米国で一般的な消費者が日常的に利用する主要な小売チェーンのこと
- ※ 2…MAHA(Make America Healthy Again):米国の新しい健康政策。まだ実行段階にはないものの、食品政策を左右する国家的ビジョンとして注目されている
- ※ 3…クリーンラベル:保存料や人工香料などの添加物を避け、自然志向を強める米国市場のトレンド