農林中央金庫のサステナブル・ファイナンス
当金庫は農林水産業を支える協同組織の一員として、自らのビジネスが、農林水産業の営みによる「いのち」や自然の循環・地域社会における人々の豊かな暮らしとともにあることを認識したうえで、サステナブル・ファイナンスを通じた環境・社会課題の解決を目指します。
2021年度から2030年度までのサステナブル・ファイナンス新規実行額10兆円を目標に掲げています。
なお、サステナブル・ファイナンスには、グループ会社の農中信託銀行株式会社によるローンの組成、農林中金全共連アセットマネジメント株式会社が運用するESGファンドの外部運用受託、Norinchukin Australia Pty LimitedおよびNorinchukin Bank Europe N.V.による投融資および調達を含みます。
ESGインテグレーション
環境・社会リスク管理の一環として、投融資案件の審査にESGインテグレーションを取り入れています。
投融資先の財務分析とESG評価の総合評価で投資判断を行います。また、その過程で投融資先と対話を行い、「悩み」や「課題」を共有することで、投融資先のサステナビリティ取組みの支援や次のビジネスチャンスの創出につなげていきます。
取組実績
2030年度までのサステナブル・ファイナンス新規実行額目標10兆円のうち、2022年度末時点で4.4兆円(うち環境分野2.0兆円)の進捗となっています。
アセット・商品別の内訳
投融資 | 市場運用資産等 | 約2.3兆円 |
---|---|---|
プロジェクトファイナンス | 約1.2兆円 | |
ESGローン | 約0.7兆円 | |
投融資 計 | 約4.2兆円 | |
(うち環境分野) | (約2.0兆円) | |
調達 | グリーンボンド・グリーン預金 | 約0.3兆円 |
インパクト創出・可視化に向けた取組み
適切な経済的リターンを得ながら、環境的・社会的にポジティブなインパクトを創出するインパクト投融資の取組みは、投融資活動を通じて環境・社会課題の解決に直接貢献するものとして近年関心が高まっています。当金庫においても、前述のサステナブル・ファイナンス新規実行額目標の達成に向けて着実に取組みを進めるとともに、当該投融資活動が環境・社会課題にもたらすインパクトを可視化し、定量的な管理を可能とするインパクト計測・管理(Impact Measurement and Management, 以下「IMM」という)も実施しています。
インパクトの創出事例
当金庫では2021年よりグリーンボンドを発行しています。グリーンボンドによって調達した資金は再生可能エネルギー事業など環境改善に資する事業への投融資に充当するとともに、当該投融資が創出したインパクトの計測・開示を行なっています。2023年3月末現在、資金充当先の再生可能エネルギー事業においては、年間約64万トン (当金庫持分) のCO₂削減に貢献しています。
インパクト投資の取組み
当金庫は、グループ会社の農林中金全共連アセットマネジメント株式会社(以下、「NZAM」)と連携し、2022年度に最大150億円のインパクト・プライベート・エクイティ・ファンド※投資を可能とする投資プログラムを開始しました。2023年3月末時点で4ファンド、100億円の投資実績となっており、気候変動のほか教育機会や医療・福祉等へのポジティブなインパクト創出を目指しています。
また、当金庫およびNZAMは、プライベート・エクイティ分野のESGレポーティング標準化を目指すESGデータ・コンバージェンス・プロジェクトに参加しています。このプロジェクトは、プライベート・エクイティ分野において、運用会社がそれぞれ独自の手法で取り組んでいるESGのレポーティングに対して、100社超の投資家や運用会社が協働し、レポーティング項目等の標準化、質的向上を図り、ESGへの取組み状況を明確にするものです。これらの取組みを通じてインパクト投資の拡充を促進し、持続可能な環境・社会の実現に貢献していきます。
※ 経済的なリターン、および環境・社会インパクトの創出を同時に目指すプライベート・エクイティ・ファンドの総称。
環境・社会課題解決に貢献する投融資
水素インフラファンドへの出資
当金庫は、水素インフラファンド「Clean H2 Infra Fund S.L.P.」(以下「本ファンド」)への投資実行契約を締結しました。
本ファンドは、Air Liquide、TotalEnergies、VINCIなどの水素関連企業が参画する世界最大規模の水素インフラファンドであり、投資対象は、水素製造事業から水素ステーション事業まで水素バリューチェーン全体を幅広くカバーしています。利用時にCO2を排出しない次世代エネルギーである水素の社会実装を加速し、脱炭素社会の実現を目指しています。また、本ファンドは、欧州連合が定める金融機関を対象としたサステナブルファイナンスに関する開示規則「 Sustainable Finance Disclosure Regulation(SFDR)」の第 9条に該当するファンドです。SFDR第9条に該当するファンドは、サステナブルな投資目的を持つ商品と定義されています。
世界各地で手がけるプロジェクトファイナンス
投資ビジネスにおいて、プロジェクトファイナンスに本格的に取り組んでいます。貸出先の法人の信用度に応じて融資を行うコーポレートファイナンスとは異なり、プロジェクトファイナンスは特定の事業・プロジェクトを対象として、その採算性を評価したうえでファイナンス対応をしています。
プロジェクトファイナンス事例
融資残高:10,284億円
英国・大陸欧州の洋上風力や海底送電線、中東・日本の太陽光発電など再生可能エネルギー案件にファイナンス対応しています。
融資残高:10,561億円
豪州や中東の水処理案件、豪州・英国・中東の学校や病院をはじめとする公共施設など社会インフラ案件にファイナンス対応しています。
2023年3月末時点
サステナビリティ・リンク・ローンをはじめとしたESGローン商品
投融資先の経営戦略上の環境・社会課題解決に向けた取組みを促進するとともに、中長期的な企業価値をサポートするため当金庫ではESGローン商品を取り扱っています。
サステナビリティ・リンク・ローンは、投融資先の経営戦略に基づくサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を設定し、貸付条件と投融資先のSPTsに対する達成状況を連動させることで、投融資先の目標達成に向けた動機付けを促進するものです。
また、グリーン・ローン原則等に準拠した資金使途限定のローン商品としてグリーン・ローン(環境配慮事業)、ソーシャル・ローン(社会配慮事業)、サステナビリティ・ローン(環境・社会配慮事業)を取り扱っているほか、企業の脱炭素に向けた移行の取組みに対して資金供給を行うトランジション・ローンの取り扱いも開始しています。
これらの商品により、お客さまの環境・社会課題解決に向けた取組みをサポートします。
商品名 | 2021〜2022年度までの 新規実行累計(億円) |
資金使途 | |
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サステナビリティ・リンク・ローン | 3,153 | 非限定(SPTsを設定) | |
グリーン・ローン | 2,105 | 限定 | 環境配慮事業 |
ソーシャル・ローン | 298 | 社会配慮事業 | |
サステナビリティ・ローン | 142 | 環境配慮事業かつ社会配慮事業 | |
トランジション・ローン | 376 | 限定/非限定 気候変動に資する取組み |
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ポジティブ・インパクト・ファイナンス | 767 | 非限定 |
農業法人へのGHG計測支援および金融支援
静岡県の農業法人である株式会社鈴生(以下、当社)と、 当社のScope1~2のGHG排出量削減を目標とするサステナビリティ・リンク・ローンの契約を2022年12月に締結しました。目標設定にあたっては、当金庫の支援により、アスエネ株式会社のCO2見える化・削減・報告サービスも使用したGHG計測(Scope1~3)を実施しています。
電力会社と連携した環境・社会課題解決の取組み
北陸電力株式会社(以下、当社)は、安定的な電力供給を通じたサステナビリティ経営に取り組んでいます。
当金庫はこれまで、当社との共同出資により、農業従事者の減少や天候不順による野菜の生育不良など地域や農業が抱える課題解決などを目的として、完全人工型植物工場におけるレタス類の生産・販売を行う株式会社フレデリッシュを設立するなど、様々な連携を行っていました。また、当金庫独自の農林水産業の知見・ネットワークを活かして、今後のカーボンニュートラル戦略に関しても役職員レベルで対話を続けてまいりました。そのような事業連携・対話の中で、当金庫は、カーボンニュートラルのために電源の脱炭素化を目指す当社理念・戦略に共感し、当社が重点取組事項としている「水力発電の新設・リパワリング」および「石炭火力発電におけるバイオマス混焼比率の増加」を踏まえ、それら2つに関連するサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を設定したサステナビリティ・リンク・ローンの契約を2022年8月に締結いたしました。当金庫は、事業連携やファイナンス等を通じて、持続可能な社会の実現へ貢献していきます。
企業との協業等による気候変動問題解決への貢献
三菱地所株式会社(以下、当社)と当金庫は、大手町・丸の内・有楽町地区を起点に、様々な企業が連携、SDGs活動を推進する「大丸有 SDGsACT5」に参画するなど、幅広いテーマに対して街を挙げたSDGsへの挑戦を行ってまいりました。そのような活動も通じ、役職員レベルで対話を深める中で、気候変動問題の解決に貢献するSPTs(2025年度:再生可能エネルギー由来の電力比率100%、2030年度:CO2等温室効果ガスの2019年対比の総量削減率Scope1~2 70%、Scope3 50%)としたサステナビリティ・リンク・ローンの契約を2022年10月に当社と締結しました。
当金庫は、企業との協業やお客様の取組みを後押ししながら、気候変動問題の解決に貢献していきます。
陸上養殖事業による食料の安定供給・海洋資源保全への貢献
フィッシュファームみらい合同会社(以下、当社)は、トラウトサーモン陸上養殖事業を通じて、海洋汚染の防止、生物多様性の保全等の環境課題に加え、持続可能な食料供給、地域産業の活性化等の社会課題に取り組んでいます。
当金庫は、環境・社会両面の課題解決に資するこの取組みを支援するため、2022年3月に当社とサステナビリティ・ローンの契約を締結し、資金面をはじめ多方面から支援を行っています。
なお、本事業は、株式会社日本格付研究所が社会的便益・環境改善効果等を高く評価し、最高評価の「SU1(F)」を取得しています。
実証実験中の生簀
出資を通じた持続可能な環境・社会への貢献
当金庫では、お客様の環境・社会課題解決をサポートするファイナンス機能を拡充するため、サステナビリティに取り組むお客様等のエクイティニーズにも対応しています。出資先の取組みや技術をお客様や会員組織に還元することで、持続可能な環境・社会に貢献します。
トピック
脱炭素化の実現を目指すビジネス連携および新会社の設立
~余剰電力循環型太陽光PPA※サービス~
※Power Purchase Agreement(電力販売契約)の略称
当金庫は、JA三井リース株式会社(以下「JA三井リース」)、JA三井エナジーソリューションズ株式会社、株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ、株式会社VPP Japanとともに、「サーキュラーグリーンエナジー合同会社」(以下、当社)を設立しました。
当社は、太陽光発電設備の自家消費サービスに加え、当該設備から生じる余剰電力の有効活用を行う「余剰電力循環型太陽光PPAサービス」の提供を開始しています。本サービス利用者は、初期投資不要かつメンテナンスフリーで自家消費型太陽光発電を導入することができ、GHG排出量および電力コストの削減、電力の安定調達、非常時の電源確保等が可能です。JA三井リースや当金庫の取引先やJAなどの系統団体が保有する建物屋根への導入を推進することにより、脱炭素化を目指していきます。
グリーン調達の取組み
グリーンボンドの発行
当金庫では、海外市場において米ドル建農林債をグリーンボンドとして発行しています。農林債とは、当金庫の資金調達のために「農林中央金庫法」に基づいて発行が認められた債券を指します。
本債券は、再生可能エネルギー事業など環境改善に資する事業への投融資に資金使途を限定して発行するもので、当金庫にとって初めてのグリーンボンド発行です。発行に先立ち、グリーンボンドフレームワークを策定し、国際資本市場協会(ICMA)の「グリーンボンド原則2021」に準拠していることを確認しています。
グリーンボンドの発行およびその調達資金による投融資を通じて、持続可能な環境や社会の実現に貢献していきます。
日本銀行における気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション(気候変動対応オペ)への対応
日本銀行が行う「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション」の利用に際して、わが国の気候変動対応に資する投融資と判断するにあたっての基準および適合性の判断のための具体的な手続きについて開示します。
気候変動対応オペの対象投融資(当金庫の定める基準に該当するもの)
:3,497億円 (2021年度末時点)
:9,587億円 (2022年度末時点)