現場の声 JF北灘(きたなだ)(徳島県)

水産業への貢献

代々が培ってきた海の財産を次世代につなぐ ※左から JF北灘 女性部 島由美子(しまゆみこ)様、小川邦子(おがわくにこ)様、松下純子(まつしたじゅんこ)様、清水康子(しみずやすこ)様

JF北灘(きたなだ)の管内である徳島県鳴門(なると)市の北灘沖は、瀬戸内海に面した豊かな漁場で、天然鯛「鳴門北灘べっぴん鯛」等が知られるとともに、「すだちぶり」や「鳴門わかめ」などの養殖も盛んです。魚食普及に力を注いでいるJF北灘の女性部の活動について、女性部・松下純子(まつしたじゅんこ)部長をはじめとするみなさんに話を伺いました。

まずは魚を食べてもらうことがテーマ

「JF北灘(きたなだ)の女性部は現在15人。1年を通じてワカメ祭り、桜鯛祭り、ブリの即売会など、季節ごとに地元でイベントを開催する際には、女性部が地元産の魚を調理して販売しています。また、鳴門市内の他漁協の女性部と連携し、地元産のモズクやラッキョウなどの加工品を製造して、『JF北灘 さかな市』で販売しています。

近年では、日本人の魚食離れが進んでいるといわれますが、その傾向は海の町である北灘地域も例外ではありません。そこで、まずは地元のみなさんに地元産の魚を食べていただきたいと、平成23年4月に設立されたのが漁協直営店『JF北灘 さかな市』です。女性部の活動としても、魚食普及がメインとなっています。」(松下純子部長)

「JF北灘 さかな市」(写真左)では、地魚や干物などの水産加工品に加えて農産物や土産品も取り扱うとともに、漁協食堂「うずしお」(写真右)を併設。大浦漁港を含む敷地が「海の駅」として認定されています。「JF北灘 さかな市」への来客数は、平成28年度に8万人を超えました。

体験しながら水産業を知ってもらう

「数年前からは、地元のケーブルテレビで魚料理を紹介しています。毎週放送の30分番組で、繁忙期には鳴門市内の他漁協の女性部のみなさんと交替しながら、月に1品のペースで紹介しています。また、『JF北灘 さかな市』内では、放映された収録をまとめた編集版を流しています。

現在は、魚をさばけないという人が多いでしょう。だったら、調理方法は、目で見て覚えるのが一番。鯛のカルパッチョなど、季節ごとに旬の魚や水産物を使ったメニューを考えています。ありがたいことに外で声を掛けていただくなど反響がある一方で、最近の悩みといえばレパートリーがなくなってきたこと(笑)。」(松下部長)

「わが家はワカメの養殖を営んでおり、県内の小学校から体験学習を受け入れています。浜で育った子どもたちから、魚はスーパーの切り身しか知らないと聞くと悲しくなります。魚を食べないようになると、調理方法から何まで受け継ぐ人がいなくなってしまいます。魚を食べるという文化を誰かがつないでいかなければ…。地魚の魅力は何といっても鮮度。そのおいしさを知ってほしいです。」(清水康子(しみずやすこ)様)

JF北灘では、子どもたちや観光客を対象に“ハマチの餌やり体験ツアー”“魚のさばき方教室”“観光定置網見学ツアー”“観光底引き網体験ツアー”などを開催しています。

次世代のために、この町を守る

「忙しいなかでも女性部の活動を続けてこられたのは、一つは女性部のメンバーの絆。鳴門市内の他漁協の女性部のみなさんと年に1回は総会を開いて、互いの水産加工物を持ち寄るなどコミュニケーションを図っています。もう一つは、子どもたちの世代のために、という気持ちがあります。

実は、北灘町は過疎地域に指定されています。いわゆる限界集落のように孤立した地域ではないので、意外だと言われることも多いのですが。若者を中心に人口流出が進み、数年前には町内の小中学校が休校となりました。保育所もなくなり、子育てには厳しい環境です。『JF北灘 さかな市』が造られたのも、町を守っていきたい――主要産業である水産業を守りたい――そのためにはまず魚を食べてもらおう、というのが発端でした。とはいえ、今日ここに集まった女性部のメンバーは全員、息子が後継者として水産業に就いているんです。子どもたちや孫の世代のためにも、町をなくすわけにはいきませんよね。

よく農家のみなさんが『代々受け継いできた土地を大事にしないといけない』といいますが、漁業者も同じです。海で働くには漁業権が必要ですが、これもご先祖さまからの遺産ですよね。代々培ってきたものを次につなぐのが私たちの役割だと思っています。」(松下部長)

マダイのなかでも最高級ブランドといわれる「鳴門北灘ぺっぴん鯛」(写真左)。徳島魚市場(株)と共同開発した、餌にすだちを加えた「すだちブリ」にはビタミンEが豊富に含まれている(写真右)。

(取材日:平成29年5月)

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