現場の声 太良町(たらちょう)森林組合(佐賀県)

林業への貢献~木育活動への支援

自然資源を次世代に託す夢のプロジェクト 太良町森林組合 ※左から 村井樹昭(むらいしげあき)代表理事組合長 太良町 岩島正昭(いわしままさあき)町長

平成26年10月、佐賀県太良町が発表した「多良岳200年の森」づくりプロジェクト。太良町が事業主体となり、町有林のヒノキ団地(41.3ha)と太良町森林組合が所有するスギ団地(9.8ha)を対象地域に、樹齢200年の長伐期大径材を生産できる森づくりに取り組んでいます。

神社仏閣のご神木がヒントに。付加価値の高い森づくりを目指す

「樹齢200年というと驚かれるかもしれません。現在の日本での標準的な伐期齢は40~50年ですから。しかし、伊勢神宮で20年に1度行われる式年遷宮では、長さも太さも通常の倍以上となる樹齢300年のヒノキがご神木として使われました。神社仏閣の補修に使うような優良な長伐期大径材は全国的に不足しています。

太良町森林組合は、昭和54年から“枝打ち100万本運動”を推進し、過度に機械に頼らず人の手をかけながら、市場価値が高く、災害等にも強く、かつ健全な地域の森づくりを徹底してきました。管内の森林面積は4,192haと九州一小さな森林組合ではありますが、おかげさまで当管内から出荷する多良岳材は品質面で高く評価いただいています。

しかし、全国的に木材価格の低迷は続いています。岩島町長との話し合いのなかから、未来の地域のために、さらに付加価値の高い『多良岳200年の森』づくりのコンセプトが具体化しました。」(村井代表理事組合長)

「多良岳200年の森」地域。間伐などの施業を段階的に行い、200年かけて直径100cm超・樹高40m超のヒノキ、直径120cm超・樹高45m超のスギを目指します。

地域を守り、活性化の鍵となる“森林”

「太良町の一番の自慢は何かと問われれば、それは山と海です。町を訪れた多くの方が『乱開発されていない自然の美しさは財産だ』と言われますし、この町で生まれ育った私自身もそう思います。自然はさまざまな恵みをもたらしてくれます。町の総面積5割以上を占める森林は、台風などの災害から地域を守ってくれるだけではありません。森林で涵養された豊富な地下水をポンプでくみ上げて、全世帯の99%が町営水道として利用しています。

日本全国で、山林所有者の高齢化と木材価格の低迷等による森林の荒廃が問題になっています。森林を守るために、近年、太良町は町有林を増やしてきました。平成5年から15年間で410町(約406ha)、私が町長に就任した平成19年には350町(約347ha)を4億円かけて町有林化しています。地域のために、森林を伐採して土地を広げ、企業を誘致するという考え方もあるでしょう。しかし、私は同じ価値観を持つみなさんと自然環境を守りながら地域を活性化していきたい。地域のみなさんを巻き込みながら、漁業と林業、観光業をつなげる取組みを行っているところです。

太良町森林組合は、協同組合ですが、地域の産業と雇用を支える重要“企業”です。多良岳材のブランド化や将来に向けた製材・加工への取組みについても、町は積極的に関わって応援しています。」(岩島町長)

訪れた多くの人が感嘆する太良町の海と山。自然資源は太良町の財産です。
太良町森林組合のみなさん。太良町森林組合は新卒採用にも積極的で、全職員の約半分を10~30代の若手が占めています。

森林組合、学校、町、地域が一体となって人を育てる

「『多良岳200年の森』づくりも、森林組合単独ではできません。これだけの町有林があり、町との協働があったから実現できました。プロジェクトはスタートしましたが、200年後の成果は次世代に託すことになります。地域の子どもたちに森に関心を持ってもらう木育活動は、非常に重要な取組みです。

佐賀県森林組合連合会、農林中央金庫の協力も得ながら、今後も町や地域の学校と一体となって連携し、子どもたちに森林の役割を知ってもらうとともに、林業、ひいては200年後の地域を支える担い手を育てていきたいと思います。」(村井代表理事組合長)

太良町森林組合と多良小学校が協働する植林活動(左)。「子どもたちが、森林からの恩恵や、地域の産業を知るためにも体験学習は非常に重要です。太良町では、町がコーディネーターを派遣して、学校と森林組合等関係団体をつなぐなど、地域の協力体制がしっかりしています。」上野義晴(うえのよしはる)多良小学校校長(中央)、担任の熊本由美子(くまもとゆみこ)先生(左)と森元絵美(もりもとえみ)先生

山と川、海のつながりを学ぶ総合的な学習の時間
農林中央金庫が提供した木育テキスト

(取材日:平成28年3月)

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