現場の声 金山町(かねやままち)森林組合(山形県)

林業への貢献~「農中森力(もりぢから)基金」助成先の取組み

航空レーザ計測技術を活用し、施業プランを高度化 金山町森林組合 狩屋健一(かりやけんいち)総務課長

樹齢80年以上で主伐を行う長伐期施業を基本に、高品質な住宅用構造材としても評価が高い金山杉を産出する金山町森林組合。同森林組合が森林再生基金(農中森力(もりぢから)基金)の助成を活用。他の森林組合に先駆けて実施した航空レーザ計測について、その目的と期待される効果について伺いました。

これからの森林組合に求められる森林経営のコンサルティング力

「このたび、航空レーザ計測を行った背景には、国内で木材価格の低迷や山林所有者の高齢化が進む昨今にあって、これからの森林組合は森林経営に関する提案力をさらに高める必要がある、とかねてから考えていたことがあります。

具体的には、山林所有者に対して、森林整備の必要性を訴えるだけでなく、森林を保有することのメリットとデメリット――例えば、固定資産税や森林整備コスト、間伐材等の販売収入などのバランスを見ながら、戦略的かつ中長期的な施業プランの立案を求められる場面が増えている、と感じています。

しかし、戦略的な提案をするには、従来の森林の基礎情報では不十分でした。今回、平成26年度の『農中森力基金』を活用したプロジェクトでは、当管内の民有林の約1/2となる3,000haを対象地域に、航空レーザの専門業者であるアジア航測(株)に依頼して計測を実施し、これまでは技術的に把握できなかった詳細な森林情報を得ることができたのです。」(狩谷総務課長)

金山杉のシンボル、樹齢300年の大美輪(おおみのわ)のスギ林
地域の大工さん、全国の施工者・設計者との連携が活きる金山杉住宅

1本1本の樹の“身長・体重・胸囲”が把握できる航空レーザ計測

「アジア航測(株)の特許技術を活用した森林支援マネジメントシステムは、空からのレーザーデータ解析により、高精度な地理・地形情報、森林資源情報を提供します。従来では取得が困難だった森林資源情報――例えば、一定面積に樹木が何本分布しているか、さらには1本ずつの単木情報(位置、樹種、樹高、胸高直径、材積等)を約1割の誤差で取得することが可能になりました。」(アジア航測(株) 空間情報事業部 空間データ解析センター 森林情報課 大野 勝正(おおの かつまさ)様)

「地理・地形情報としては、現在の山林・森林情報を正確に把握することは、防災の観点からも重要です。また、以前整備された森林地域の場合、現在の職員が行ったことがないケースもありますが、森林の位置・資源情報はもちろん、当時の路網整備の状態も正確に確認できます。

解析データを専門機器ではなく、一般のタブレットやスマートフォンで確認できるのも利点です。森林の場所を指定すれば、新米の職員でも、きちんと到達することができますからね。」(狩谷総務課長)

空中写真では陰になって識別できない樹木の分布情報や単木情報(本数、位置、樹種、樹高、胸高直径、材積等)も、航空レーザ計測なら取得できます。解析データを活用することで、若手職員でも森林状況を容易に把握することが可能です。

「解析データを活用いただく可能性として、例えば、新たな路網を作られる場合には、赤色立体地図で山の地形や傾斜を確認いただき、緩やかな傾斜面を選択しやすくなります。」(アジア航測 大野氏)

「森林資源データをもとに、路網周辺に伐採に適している樹齢の樹木が何本あるのか、間伐率、何cmの丸太に製材するか、A~D材となる歩留まり率など、さまざまなデータを付加して分析することで、製材による販売収入を予測することができます。つまり、路網整備コストと将来の収益を比較して、より効率的な路網整備の計画が可能になりますね。」(狩谷総務課長)

PDCAサイクルを通じて、着実に生産力と企画力の向上を図る

「今後は、この高精度な森林資源情報を、いかに当組合の事業に活用していくかが課題となります。折しも、山形県では、大規模なバイオマス燃料のプロジェクトが計画され、5年後には約30万㎥の木質燃料が必要とされるなど、木材需要は増加しています。

当組合において、まずは生産力の向上に向けて、解析データを活用した森林整備計画を策定しているところです。アジア航測さんにもご協力いただきながら解析データの分析を進めます。当組合においても、一般の会社と同じくPDCA(計画→実行→評価→改善)を繰り返しながら、山林所有者のみなさまに、森林経営について多角的に選択肢をご提案していけるよう、進化していきたいと考えています。」(狩谷総務課長)

効率的に間伐等を行うには、どこに道を作るかといった路網整備計画が基本。木材価格が低迷するなかにあっても、山林所有者に収益を還元するためには、森林整備コストに対する意識がけが一層重要となっています。

金山町森林組合は、グループ会社を通じてバイオマスチップを供給。A~D材まで1本の木を無駄なく使い切る仕組みを整備しています。

(取材日:平成28年3月)

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