現場の声 JA鹿児島いずみ(鹿児島県)

農業への貢献~アグリシードファンドを活用した支援

パートナーシップを通じて農業の高度化を図る時代へ 有限会社コセンファーム 古川拡(ふるかわひろむ)代表取締役社長

JA鹿児島いずみ管内では、畜産と水稲・野菜などの生産が農業の柱です。地域を担う一人が、鹿児島県農業法人協会の会長でもあり、養鶏業を基軸に水稲・野菜などの循環型農業を営む有限会社コセンファームの古川拡(ふるかわ ひろむ)代表取締役社長です。

大学在籍時から就農。養鶏業と循環型農業を拡大

「大学生時代から家業の養鶏業に携わってきました。経済の成長期に事業を拡大し、平成7年には当社を設立。現在は136,000羽を擁し年間の採卵生産量が2,500トン前後に、水稲・バレイショ等の作付面積は約30haへと広がりました。この間、JA鹿児島いずみとは、土地・建物の拡充や大型機械の導入時における融資等の金融支援、野菜の販売など、長年にわたり、パートナーシップを組んできました。また、経営を拡大するにあたり、今回のアグリシードファンドのように出資という形で必要な資金を提供してもらったことは、自己資本を厚くし、財務体質を強化するという観点から、非常に意義深いと思います。

養鶏場スタッフとともに。(有)コセンファームにおける年間の採卵生産量は、およそ2,500トンに及ぶ。

養鶏業に加えて、平成15年からは、鶏ふんを活用した有機肥料で加工用バレイショの生産を開始し、現在は、水稲、キャベツ、高菜、大根を作付けしています。有機肥料については、3年前から量販店等を通じて全国に販売しています。

有機肥料で栽培した野菜は自然の甘みがありますね。高品質の農作物を安定して作る基盤は、まず良い土壌です。近年、国内では台風や豪雨など天候の変化が激しいだけに、そうした天候にも左右されにくい強い土壌作りがさらに必要です。農産物のために良い土壌を作るには、有機肥料を使う以外にも、連作障害を回避するために複数の野菜をローテーションで作付けしたり、微生物を含んだ水を圃場に散布するなど、さまざまな研究が必要です。」((有)コセンファーム 古川 拡(ふるかわ ひろむ)代表取締役社長)

(有)コセンファームの圃場での草刈り風景。鶏ふんを使った有機肥料を活用した循環型農業を営む。

安定的に安全で高品質な農作物を提供する基盤は“人づくり”

「長年のテーマが人材の獲得と育成です。現在、従業員は13名で、うち3名がベトナムからの研修生です。地元の若い働き手が不足するなか、継続的に海外研修生を受け入れています。最近では、農業体験を目的としたボランティア的なアルバイトの活用も試みています。

近年、農業には、鳥インフルエンザなど、過去にはなかったリスクが生じていますが、私の長年の経験上、衛生・安全管理の基本は“当たり前のことを、当たり前に実行する”につきます。生産性・効率性、品質向上、すべてに通じることですが、従業員一人ひとりが高い意識で日々の業務を遂行するか否かで大きな差が出てきます。

かつては、私が口うるさく従業員を注意していましたが、やはり外部の方が言うほうが効果的なんですよ。数年前からは定期的にコンサルタントに来社していただき、『カイゼン』で知られる“トヨタ生産方式”を従業員に指導いただいています。最初は、仕事場の動線を効率化する机の置き場所といった細かなことからはじめ、今では後継者である娘夫婦に決算書や事業戦略の作り方などを教えていただいています。」(同)

後継者である娘婿の大城勝司(おおしろ かつし)様(右)と。
若い従業員たちのキビキビとした動きが印象的。

農家、JA、外部の専門家が連携し、役割を分担する

「当社の場合は、卵の販売・ブランド化は農協にお任せして、高品質の製品を安定供給することに力を注いでいます。事業を拡大する過程では、JAに加えて外部のコンサルタントとも連携してきました。とはいえ、農家は総合事業ですから、経営者は現場の仕事だけでなく、決算・税務・資金調達などすべてをこなさないといけません。

現場のことはある程度後継者に任せ、私は県内外の研究会等にできるだけ出席して、他の農家さんの工夫や、今の消費者が何を求めているのかなど、情報収集を心掛けています。なぜなら、普通の農家はそうした時間がとれないのが現状だからです。こうした情報収集が難しい農家に対して、JAがどうサポートするのか。JAに対する期待は高まっていると思います。

高品質・高効率な養鶏業・農業に向けて、鶏舎の温度・湿度のデータ化や土壌分析を行うなど、今後は農業のIT化が進むでしょう。データ分析に長けた人材も必要になります。人材、財務、マーケティングといった、さまざまな経営テーマを農家が一人で担うのは無理です。JAに窓口になってもらって専門家を紹介していただくなど、これからは外部のパートナーといかに連携するかがさらに重要になってくると思います。

後継者である娘婿も意欲的に農業に取組み、今後の事業戦略を彼に託しつつあるところです。自分一人ですべてを担うのではなく、場合によっては必要な人材・機能を外部にお願いするという、JAをはじめとする外部との連携をさらに進めてほしいと思います。」(同)

高級肉としてブランド化を進めるJA鹿児島いずみの「華鶴(はなつる)和牛」
管内ではバレイショの栽培も盛んです。

(取材日:平成28年4月)

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