現場の声 JAいしのまき(宮城県)

復興支援

利益の追求ではなく、すべては先祖代々の土地と地域を守るため。 JAいしのまき 組合員 (株)サンエイト 千葉久馬(ちばきゅうま)社長

東日本大震災の被災地では、営農再開後も復興への懸命な努力が続いています。管内の多くの農家が離農せざるを得ないなか、地元のみなさんを雇用しながら、地域を守り続ける農業法人、(株)サンエイトの千葉久馬社長にお話を伺いました。

地域の土地とコミュニティを守るため、懸命の努力が続く

「(株)サンエイトは、8人の農家で平成19年に設立した農業法人です。しかし、東日本大震災による津波で水稲50haすべてを被災し、正直言って農業を継続するか悩みました。再開を決断したのは『続けてください』という地元の声があったからこそ。平成26年度の収量は10アールあたり8俵となりました。とはいえ、塩害に見舞われた土壌では、除塩しても砂に稲作をするようなもの。元通りの土になるのは、まだまだ先になりそうです。」

「実は、東松島市牛網(うしあみ)と浜市(はまいち)地区は、震災前までは120軒とJAいしのまき管内で最も農家数が多かった地域です。しかし、震災後は4軒の個人農家と(株)サンエイトしか再開できませんでした。こうした状況下で、地域のみなさんの強い要望から、(株)サンエイトが農地を借り受けて農業を受託することにしました。現在は、震災前の倍となる100haの農地で、地元のみなさんを雇用しながら、水稲、大豆栽培、イチゴ栽培を行っています。」

粒が大きく実がしっかりしている「奥松島のいちご」。
津波による被害があった水田も除塩を進め、稲の作付けが行われています。

次世代のために、JAグループと連携して農産物の新たなブランド化を模索

「特にイチゴ栽培については、震災後に新たに取り組むもので、JAグループの支援事業でハウスを建設し、JAと連携して販路を開拓するなど『奥松島のいちご』としてブランド化を進めています。」

「震災後の活動は、利益の追求ではなく、すべて先祖代々の土地と地域を守るためです。現在の年間売上は1億2千万円ほどで、ほぼ経費。今ある機械設備でいかに効率的な作付けができるか、という課題に頭を悩ませているところです。でも、これだけの土地を預かったからには、何とか維持して、次世代に引き継いでいかなければなりません。」

千葉社長(写真右端)を囲んで。イチゴに携わる地元のみなさんには笑顔が絶えません。

(取材日:平成27年5月)

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