
コンビニとフランチャイズ契約。店内では地元農家の野菜を販売
「参加するのが嫌でたまりませんでした」と30年前を振り返るのは、当時営農センターのメンバーだったJA上伊那の伊藤淳飯島支所長(57)。営農組合設立の懇談会で、自分の親よりも年上の農家に「若造に何が分かる」と怒られた経験を思い出すと言います。「それでも、その時の積み重ねがあるから、今の飯島町の農業のベースが出来たと思うんです」
現在、飯島町営農センターでは月1回、定例の幹事会を開催。町の農業の現状や課題について、さまざまな報告や話し合いを行っています。最近も営農センターに参加する中で、地域を取り巻く状況の変化を感じています。
特に、懸念しているのは、人口減少とともに地域の生活基盤が失われていくこと。例えば、飯島町に残るガソリンスタンドは2軒のみ。2軒ともJAが経営しています(全農との協同経営含む)。
近年、商店の閉鎖などで暮らしへの不安を感じる地域の人々のため、JA上伊那はコンビニ大手のファミリーマートとフランチャイズ契約を結び、山間部の過疎地域に“多目的コンビニ”をオープンさせています。店内には、コンビニ向けの商品だけでなく、肉や魚などの食品や、地元の農家が作った野菜を販売するコーナーも。地域の人々の暮らしを支えているのです。
「飯島町では、葬儀場もJA が運営していますが、個人的には、将来この地域からタクシーがなくならないか心配しています。もしそうなったら、コミュニティの交通を維持するため、JAとして何が出来るのか。最近はそんなことも考えています」と伊藤支所長。JA上伊那では、2019年春から、貯金の入出金などが可能なJAバンクの移動店舗車の導入を予定。「道の駅田切の里」で行われている移動販売車・宅配車のサービスとともに、地域のライフライン強化への貢献が期待されています。
「酒を酌み交わしながら熱く農業論を語り合った時代から、農家も代替わりしています。それでも、地域と農業の課題を解決するために、常に新しい取り組みが求められる状況は変わりません」と伊藤支所長。
「私を含め、JAの職員には地元出身者が多くいます。地域の一員だからこそ、我々には町のこと、農業のことを考え続ける責任があると思っています」

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